志村坂上スケキヨ

イリュージョニストの志村坂上スケキヨのレビュー・感想・評価

イリュージョニスト(2010年製作の映画)
4.0
■なあに、ひとつの季節が終わっただけさ
 
年老いた手品師タチチェフと彼の手品を魔法と信じて彼に付いてきた少女アリス。二人が静かに旅をする物語。自分を慕ってくれるアリスにタチチェフは次第に生き別れた娘の面影を見るようになり、二人は慎ましくも幸せな日々を送っていたのだが…。

アリスがヒドイという感想をよく聞く作品ですが、僕はそうは思いません。なぜなら、タチチェフは一度は捨てたもの・諦めたものをアリスによって与えられているのですから。彼は父親になれなかった男です。しかし、アリスとの生活の中で彼は父親に(かりそめとはいえ)なれたのです。

アリスはタチチェフを魔法使いと信じて、いろいろなものをせがみます。彼女の期待に応えようとタチチェフは慣れないアルバイトをしてまでアリスのために働きます。アリスは老人から搾取するだけの女の子に映るかもしれません。しかし、子どもという存在はそういうもので、搾取される親は与えて喜ばれることが何よりもうれしいという存在だったりします。アリスは最後に男をつくってタチチェフの元を去ります。それでいいのです。パパ風に言えば、それでいいのだ。娘を持った父親とはそういうものなのですから。

芸術的なまでに美しい風景描写と、細かい仕草まで表現したアニメーション。この息づいている世界があるからこそ、男タチチェフの立派な去り際にリアリティあり、それゆえにとても愛おしい。そんな作品でした。