ちろる

イリュージョニストのちろるのレビュー・感想・評価

イリュージョニスト(2010年製作の映画)
4.2
もっともっと早く出会いたかった極上のアニメーション。
「ぼくの伯父さん」のジャック タチが生前に書き残したオリジナル脚本を脚色した作品。
ジャック タチを思わせる主人公の老人が、スクリーンに映る実写のタチと共演する名シーンは鳥肌が立つほどで、随所にシルヴァン ショメ監督の敬愛の気持ちが溢れていました。

時代の波に流されて職を失うマジシャンの男性とホテルに勤めていた若い女給アリス。
アリスのオツムが弱いのか、それともとんでもない性悪なのかはわからないけど、中盤は観るのをやめたくなるほどムカついてきたのに、後半はそんなアリスの身勝手さなんかどうでも良くなるほどに、手品師の切ない姿に心が持っていかれて涙が出ていた。
おそらく父親と娘ほど離れている2人だけど、マジシャンはロリコンという感じではなく、独り身ゆえに無邪気に慕ってくるアリスに父性のようなものを感じていたのだろう。
「魔法使いはもういない。」
与えつづけても見返りを求めず、まるでその事がわかっていたような禅の悟りに似た生き様は、とても神々しくてこちらの心が洗われるような気持ちにもなってくる崇高なアニメーションでした。
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