アキラナウェイ

イリュージョニストのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

イリュージョニスト(2010年製作の映画)
3.3
「ぼくの伯父さん」というフランス映画のジャケットと何処となく似ているな、素敵だな、と思ったのが鑑賞のきっかけ。

調べてみたら、「ぼくの伯父さん」のジャック・タチ監督が生前に執筆した脚本をアニメ化したものだそうで。ジャケットが似ているのもそのせいかな。

各地の劇場で興行する老奇術師タチシェフは、スコットランドの離島にある小さな村の酒場で働く少女アリスと出会う。タチシェフを本当の魔法使いだと信じるアリスは、エディンバラまで彼について来てしまう。彼らは安宿で暮らし始め、タチシェフはアリスに求められるまま衣服や靴を買い与え、慣れないアルバイトでその費用を工面する様になる。

アニメーションとして、その美しさに惚れ惚れする。

特にスコットランドやエディンバラの自然の景観、街並み、列車、自分も旅に出ている様な気分。

無声映画と言っても過言ではなく、ほぼ台詞もない。アリスもスコットランド・ゲール語を話す為か、アリスとタチシェフは互いの言葉が通じていない。ストーリーは推し量る様に感じ取るのみ。

感受性と言う名のアンテナをしっかり張っておかないと、この映画のメッセージは、その美しい映像と共にただ流れて行ってしまいそう。

老奇術師の悲哀。
華々しいアイドルバンドの演奏となれば、詰め掛ける客達も、彼の手品の出番となると閑古鳥が鳴く程の客の入り。それでも彼は手品の小道具を携えて、街から街へと旅していく。

赤い靴
白いコート
白いヒール

ショーウィンドウ越しに見るお洒落なマネキンに魅せられたアリスを見て、タチシェフは次から次へと「魔法の様に」モノを買い与えていく。

何だこの娘は…。

お 前 が は た ら け 。

ダメだ!全然好きになれない!赤い靴だけで満足しろよ!

「魔法使いは存在しない」

老奇術師が最後に残した伝言が何とも言えぬ悲哀に満ちている。宿で一緒だった腹話術士の末路がまた悲しい。

素晴らしい画力はさることながら、少女の物欲の強さには興醒めしてしまったのが、何とも残念。



余談ですが、「秋のパイク祭り」を覚えておられるでしょうか?*「プライベート・ウォー」のレビュー参照。

帰宅すると、ポストに「キネフィルムズ」からの封筒。「秋のパイク祭り」に当選したらしく、「プライベート・ウォー」と「エンテベ空港の7日間」の非売品パンフレットが!!

パンフレットコレクターではないものの、当選するのって嬉しい。応募してみるもんですね。

お皿じゃなかったけどね。