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犯罪河岸のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

犯罪河岸(1947年製作の映画)
3.5
ナチスドイツ占領下にあったフランスで製作・発表された映画「密告」(1943)で対独協力を疑われたクルーゾー監督が、ジャン・コクトーらの支援を受けて、戦後最初に発表した復帰作。
原作は、スタニスラス=アンドレ・ステーマンの推理小説Légitime défense"
「正当防衛」。
(映画の原題はパリにある通りの名前。邦題は「はんざいかし」と読む。念のため)
ヴェネツィア国際映画祭監督賞受賞。
原題:Quai des Orfèvres (1947)

1946年、第二次世界大戦終了後の混乱期にあるパリの下町。
舞台歌手のジェニー(シュジー・ドレール)と彼女のピアノ伴奏をしているモーリス(ベルナール・ブリエ)は夫婦だが、男好きのする妻と、嫉妬深い夫との間には喧嘩が絶えない。
映画会社を経営する実業家で好色な老人ブリニヨン(シャルル・デュラン)に色目を掛けられたジェニーは、逆に手玉にとって女優にしてもらおうと、夫の目を盗んで会いに行く。
これを知った夫は、ブリニヨンを銃で殺そうと、劇場でアリバイ工作した上で、ブリニヨンの屋敷に行くが、彼は既に死んでいた。
アパルトマンに戻った妻は、夫の幼なじみで、階下で写真業を営んでいるドラ(シモーヌ・ルナン)に、"手元にあったシャンパンの瓶でブリニヨンを殴って殺してしまった。毛皮のマフラーを忘れた。"と告げる。
モーリスに気のあるドラは、自分が殺した事を夫に言わないように言い含め、証拠隠滅のため現場に向かう。

やがて、アントワーヌ主任刑事(アルジェリア戦線で負傷し右手が不自由、演ルイ・ジューヴェ)の捜査が始まり、モーリスら容疑者、関係者からの聞き込みが行われる…。

「私に似ている部分が多い。女には縁のないところがね」

~その他の登場人物~
・タクシー運転手。エミール(ピエール・ラルケ)
・劇場「エデン」のクローク係、パケレット(ジャンヌ・フュジエ=ジール) 
・ 自動車泥棒、ポーロ(ロベール・ダーバン)
・刑事アントワーヌが、植民地(アルジェリア)から連れてきたアフリカ系の息子

クルーゾー監督の作品は、サスペンスに加え、人間を描いた面白さがあるのが魅力。
見どころは、後半、ルイ・ジューヴェが登場して、ウソをついて口を割らない登場人物たちと犯人を突き止めようと尋問する刑事やり取り(真実に迫る過程)。
役者では、やはり、刑事役のルイ・ジューヴェが画面をさらう。
一方、監督の当時のパートナーだったジェニー役のシュジー・ドレールが、ちょっと"弱い"のが残念。
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