ひろ

ソフィアの夜明けのひろのレビュー・感想・評価

ソフィアの夜明け(2009年製作の映画)
3.8
ブルガリアの新鋭カメン・カレフ監督が、友人のフリスト・フリストフの人生を基に製作した2009年のブルガリア映画

ブルガリアの首都ソフィア近郊で暮らす17歳のゲオルギは、坊主頭にして悪い仲間とつるんでいる。彼の年の離れた38歳の兄イツォは、木工技師として働きながらドラッグ中毒の治療を受けていた。そのせいで投げやりに生きるイツォだが、彼にはアーティストとしての才能もあり…。

東西冷戦などの過去は今でも東欧の国を蝕んでいる。人種差別や格差社会、どこの国も同じような問題を抱えている。ブルガリアという日本人には馴染みのない国の現実を、元麻薬中毒で芸術家の兄と、反抗期でネオナチとつるむ弟を軸に描いているのが面白い。

社会の底辺でもがき苦しむ若者。大抵の映画は、そういった若者が希望に向かって突き進んでいく青春映画になりがちだが、この作品はただひたすらに現実を受け入れられず、苦しみ続ける主人公を描いているからインパクトがある。

この主人公を演じたフリスト・フリストフの実人生を基に映画にしているから、ある意味ドキュメンタリーみたいなもの。しかも、主演俳優が映画の完成間近になって、薬物の過剰摂取で亡くなったというから驚きだ。この作品の内容を観て、彼が薬物で亡くなったと聞くと、この映画の持つ意味が重くのし掛かる。

第22回東京国際映画祭でグランプリを受賞した作品だし、日本人が観ても感じるものがある作品なんだと思う。青春映画を観ようという軽い気持ちで受け止めきれる作品ではないので、心して観てもらいたい。
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