たかちゃん

都会の横顔のたかちゃんのレビュー・感想・評価

都会の横顔(1953年製作の映画)
3.2
戦後の清水は、新東宝、大映で撮っているが、本作は唯一の東宝作品。キャストは豪華で、池部、有馬、木暮を主役に、森繫、伴淳三郎、小泉、トニー谷らが脇を固める。伴淳三郎、トニー谷はワンシーンだけ。トニ―谷はほとんどアドリブ。まるで「駅前」シリーズのようだ、と思ったら本作の製作は佐藤一郎だった。話は迷子の親探しという設定だけ。池部、有馬はいかにも戦後の都会を象徴する職業。しかし行き交う人々は貧しさを覆い隠している。53年頃の数寄屋橋界隈は傷痍軍人がいなかったのか。渋谷は70年代初めまで傷痍軍人がいた(ドキュメントを撮ろうとしたが拒否されたことがある)。池部も有馬も暗さはない。森繫の似非紳士と彼に関わる女性然り。木暮だけが乳児を背負い、沢村に振り回されながら子供を探す。そしてラスト、ここはなくてもいいと思うが、清水としては入れたかったのだろう。技法は清水のトレードマーク大放出だ。ファーストシーンの都電車内からの街並みの移動から、ロング・ショット。主観と清水の刻印だらけ。そして脚本はあってないようなもの。箱書き嫌いの清水らしい、役者の自由度に任せて撮っている。作品評価としては褒めることはできないが、清水宏研究には貴重。
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