このレビューはネタバレを含みます
この作品を観ている間、ずっとどこか不気味で、それでいて明るく、不思議な感覚が続いた。日本ではあまり馴染みのない絵柄のせいか、登場人物たちがどこか無表情で感情が感じられず、より一層奇妙な雰囲気を強く印象づけていた。
また、この作品に含まれている皮肉的な表現に強く惹かれた。特に印象的だったのは、「自画像の王」と「本物の王」が途中で入れ替わる場面だ。にもかかわらず、登場人物の誰ひとりとしてそのことに気づかない。誰も心から王を愛していなかったことが露呈していて、どこか寂しさを感じた。
鑑賞後にいくつかのサイトを見ていると、スタジオジブリの宮崎駿監督が『王と鳥』に強く影響を受けたという記述が多く見られた。確かに、物語の後半に登場する巨大ロボットの描写には『天空の城ラピュタ』を、長く続く階段のシーンからは『千と千尋の神隠し』を連想させるような共通点があった。
しかし、『王と鳥』はジブリ作品と比べて明らかにトーンが異なる。ジブリ作品は比較的ハッピーエンドで終わることが多いのに対し、この作品では巨大ロボットがすべてを破壊し、最後に1羽の囚われた小鳥を助けて終わるという、どこか哀愁の残るシュールなラストだった。その結末に、観終わった後もしばらく余韻が残った。