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処女の泉のEyesworthのレビュー・感想・評価

処女の泉(1960年製作の映画)
4.8
【母なる大地の応答】

北欧の巨匠イングマール・ベルイマン監督×マックス・フォン・シドー主演の1961年の作品。

〈あらすじ〉
敬虔なキリスト教徒である地主テーレの愛娘カーリンが教会に向かう道中、3人の貧しい羊飼いに食べ物を分け与えるが、羊飼いたちは彼女に襲いかかった揚げ句、殺害してしまう。その夜、偶然にも羊飼いたちはテーレの農場を訪れ、一夜の宿を乞うのだった…。

〈所感〉
ベルイマン監督の『野いちご』『第七の封印』と立て続けに代表作の一つである本作を鑑賞。宗教と生活が混濁した世界における、神の沈黙というベルイマン監督の通底したテーマが本作にも見えるが、ラストの解釈はどういったものだろうか。神は応答したのだろうか。何の罪も無い無垢な少女が野獣の牙にかかってしまうなんとも胸糞悪いシナリオだが、それが生きるためであれば罪は肯定されるのか?それは否である。しかし、綺麗事では済まない生きるか死ぬかの中世においては神がイエスといえばそれはすべて正当化されるのだろう。だからこそ人は都合良く神を解釈してきた。カーリンの家族の意地悪さ、土着性にも神の息吹は等しく及んでいる…そう信じたい。こちらも寓話的で難解、しかし救いを感じさせるラストが美しい作品だった。
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