ボブおじさん

奇跡の人のボブおじさんのレビュー・感想・評価

奇跡の人(1962年製作の映画)
4.2
監督アーサー・ペンの演出によるアン・バンクロフトとパティ・デュークの文字通り体当たりの演技合戦による感動の物語。2人はこの映画でアカデミー賞主演女優賞と助演女優賞をそれぞれ受賞した。

小学生の時に世界の偉人伝などで読んでヘレン・ケラーのことは当然知っていたが、映画を初めて見た時は、そのあまりの凄まじさに驚かされた。

熱病によりわずか1歳で光と音を失ったヘレン・ケラーと彼女に言葉を教えようとする家庭教師アニー・サリバンの葛藤の日々を描く映画「The Miracle Worker」(邦題:奇跡の人)。原題からわかるように、Miracle Workerとはヘレン・ケラーではなく、アニー・サリバンのことだ。

幼少期から見えない、聞こえない、話せない(三重苦)というのは、真っ暗な海の底で生きているようなものではないか。両親はヘレンのことを憐れみ癇癪持ちで可哀相な子として育てるが、見て真似る事も言葉で教わることもできない彼女は、まるで動物のようだった。

サリヴァンは言葉さえわかれば光が見えると〝物には名前がある〟ということを指文字で懸命に教える。この2人のヒリヒリするようなぶつかり合いが、この映画の最大の見せ場だ。2人のシーンに台詞らしき台詞はない。側から見れば虐待にも見える厳しい指導だがサリヴァンは甘やかすことと愛することは違うと知っている。

多くの人が知っている水汲み場での感動のクライマックスは、何度見ても涙が出てくる。言葉というものがあると理解した瞬間に、ヘレンは動物から人間へと生まれ変わる。言葉は彼女に光と希望と喜びを与えた。

晩年ヘレンは〝障害は不便である、しかし不幸ではない〟と言っている。サリバンのような教師と出会えたことは彼女にとって幸運だったのだろう。

誰もが知る偉人ヘレン・ケラーにとってアニー・サリバンはまさにThe Miracle Worker=〝奇跡を起こす人〟だったのだろう。