たつなみ

4番目の男のたつなみのレビュー・感想・評価

4番目の男(1979年製作の映画)
4.0
ひとりバーホーベン祭り継続中。
観終わった後も何度も思い返したくなる様な不思議な余韻を持った作品。

全編に漂う不穏な空気によって否が応でも不安感を煽られる。
後の作品に見られる様なブラックジョークは一切無く、まるでD・リンチ作品の様なシュールでミステリアスな描写がとても印象的。

短髪のブロンド美女がSEXで愚かな男たちを狂わせていく…というプロットからして、『氷の微笑』はこの作品のセルフリメイクだと分かる。

主人公が”アル中で妄想癖のあるバイセクシャルの小説家”という設定は、彼自身が”不確かなもの“(=人間そのもの)の象徴であると感じた。
『現実なのか?妄想なのか?』
『正しいのか?正しくないのか?』
彼が見ている物事や考えが常に不確かなまま物語は進む。

所々で宗教的なメタファーが現れ、まるで彼を導いている様に描かれているが、ラストまで観ると『神なんて存在しない』という、バーホーベンのシニカルな人生観が伝わってくる。
後の彼の作品を観てもこの視点は変わらない。
彼は無神論者だからこそ、人生を逞しく、しなやかに生きる人間(特に女性)を描き続けるんだろう。

久しぶりにもう一度『氷の微笑』を観てみたくなった。
とりあえず『ELLE』を観るまでこの祭りは続く…。