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あしたのジョーのmatchypotterのレビュー・感想・評価

あしたのジョー(2010年製作の映画)
3.5
先日伊勢谷氏の『キャシャーン』を観て、アレでジャケ写画像がないってなって、そう言えばこれもか!?と思って観た。
やっぱりこれもジャケ写画像がなかった。

もともと山P的な事情もあったろうけど、未だにビジュアルがない、なんかやっぱり悲しい。
日本のアニメ界では伝説的な作品なだけに。

何か妙に評点低いんだけど。
やっぱり原作と色々違うところか、アニメを無理に実写にしてしまったからか。

ただ、ここでも原作を100%観ておらず、おおよその概要と名シーンをいくつか知ってる程度のあたしからすれば、これはこれで良いんじゃないか、と。

原作は1960年代後半。
この時代がこの原作を伝説にした全ての根幹。
貧しさで生きる中で見出す希望。
“どや街”の希望を背負う彼の生き様。

貧困の中で、先の希望が全く見えなくても、ただただ生きていくほか無い人たちに“あした”を見せる“どや街”のスター、矢吹丈。

その日暮らしのゴロツキ。
彼が丹下のおっさんに魅入られてボクシングの道へ。

そこで出会う、力石徹。
そう、“宿敵”。“宿敵”とはかくあるべき、みたいな出会いとこの先の運命。

原作の伝説的な力石徹の減量。
力石はフェザー級。矢吹はその2つ下のバンタム級の体で1つ上のスーパーバンタム級でデビュー。

もともとフェザー級でもギリギリの体格の力石がさらに1つ下の階級に減量。壮絶。
ボクシングの階級はだいたい1.5〜2キロごとに変わる。

つまり、限界の力石がさらに2キロぐらい落とす。
こんな地獄はない。地獄のような渇き。
それを見事に演じ切った伊勢谷氏、すごいと思う。

そして、丹下のおっさん、香川照之。
完全に合わせにいって合わさった感じ。ズルい。
こんなアニメにしかできないキャラを実写に起こせる力。さすが、大和田。

山P、、、たぶんここか。ここなのか。
ストイックな矢吹丈自体は良かったと思う。
肉体を作り、ボクシングの身のこなしもスゴい。

なんだけど、なんだけど!
いつも思うけど、山Pのこもった発音の切れ味の悪さがこの作品との相性が良くない。

もっと、サッパリした感じのイメージの矢吹丈が何かもっさりしてしまう。
ここがどうしても生まれる大きな誤差になってるのかな、原作を知ってると、きっと。

どっちかと言うと力石の方が本当は亡霊みたいにもっさりしてるはずが、逆に伊勢谷氏の切れ味が良すぎて思いのほかサッパリしてる。

その辺のキャラクター性の行き違いはあるのかも知れない。

でも、この力石徹vs矢吹丈の伝説の試合を描く本作はそれはそれでなかなか熱くなれた。

個人的にボクシングが好きだってのもあるけど、このテンポの良さとリングの躍動感はなかなか体張っててリアルでストイックに突き詰めて、臨場感がすごかった。

脇役も、ゴロツキの常連の役者ばかりでとても安心感もあって、お馴染み感もあった。

おそらく原作にはもっともっと色んな想いが錯綜してたり、他の試合があったり、そこまでの道のりがたくさんあったと思う。

とはいえ、それを全て2時間ちょっとの映画でガッツリ描くのは無理。

だから、矢吹と力石の因縁感が少し「そんなに熱くなることか?」ってなってしまう気もするけど、エンタメとして時代も感じながら、人が一生懸命生きる先を見ようとする活力みたいなバイタリティを感じれる作品。
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