みかんぼうや

ビューティフル・マインドのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

ビューティフル・マインド(2001年製作の映画)
4.3
【孤高の天才数学者を取り巻くサスペンスは、無限大の家族愛を描く感動作へと一気に昇華する】

先日、初めて「イミテーション・ゲーム」を鑑賞した時に、すぐに本作品を頭に思い浮かべたのが本作品。がしかし、約20年前の初視聴時に「物凄く面白い映画」という印象を持ちつつも、何故かストーリーをほとんど思い出せず・・・今回の再視聴でも序盤の学生時代のエピソードを見ていた時は、「この映画、本当に見たっけな?」という印象の薄さだったのですが(決してつまらなくはないのだが)、中盤の衝撃の事実あたりから、ブワッと一気に脳みその奥に追いやられていた記憶が蘇る。改めて見ても、やはりめちゃくちゃ面白い!

前述のとおり、周りから理解されにくい孤高の天才数学者の人生、という設定は「イミテーション・ゲーム」にとても似ていますが、話の内容や映画のコンセプトは全く別物(精神的な苦悩の部分など若干近しいところもあるが)。本作は天才数学者の活躍の凄みと面白さを描くのではなく、壮大な愛の物語です。しかし本作の妙味は、ただのお涙頂戴の家族愛を押しつける感動ヒューマンドラマ演出で仕立て上げるのではなく、そこまでの過程はむしろサスペンスやミステリー的な展開で盛り上げるところ。興味を引き付け続けるワクワク感と中盤のネタバレによる衝撃で、視聴者の興奮を最大まで引き上げておいて、中盤以降はその興奮を妻や本人の苦悩する姿への哀れみや共感、そこから得る感動という心情に一気に昇華させることに成功しています。結果として、最初から最後までこの先はどのなるのかというワクワク感と興奮、悲しみ、そして感動というあらゆる感覚をたった一作品で得ることができる、エンターテイメントとして最高の仕上がりになっています。「ビューティフル・マインド」というタイトルも素敵で、このタイトルを考えながら本作の終盤を見ていたら、後半は絶えず涙腺緩みっぱなしでした。

実話ベースではあるものの、上記のようなサスペンスとヒューマンドラマを融合させた魅せる演出が本作の見どころでもあるので、多分に“映画的演出”の色が強く、人によっては「ちょっとやりすぎでは?」と引いてしまう人もいるでしょうし、私もあまりに過剰演出だと引いてしまいがちなのですが、本作については、このサスペンスとヒューマンドラマ要素のバランス感が絶妙だったので、この脚色感の強さも彼のストーリーを映画らしくする意味で絶妙なレベルだと思いました。

個人的に「イミテーション・ゲーム」はつまらなくはなかったものの何か物足りない感があって、見終わった時に、もっと彼の後半の苦悩の人生を描いて欲しかった、と思ったのですが(レビューにも書きましたが)、このあたりは、自然と本作の感動の記憶が潜在的に残っていたからかもしれません。個人的には、本作のほうが何倍も好きな映画です。

しかし、これほど面白い本作を再鑑賞するまでかなり忘れていた・・・という事実にショック。相当脳みそが老いてきているな、と実感する次第でした。
(ただし、私も結婚し、また周りに統合失調症になった方がいるなど、本作と関連する人生経験を得たことで、今回の視聴のほうが、よりインパクトがあり感じるところも多かったのかもしれません)
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