同じ日に産まれた隣家の子供同士、産婦人科の火事で赤ん坊が取り違えられ相手は金持ちの家で育てられ、本来自分が幸福となるべき人生を盗まれたと老人になっても恨み続けて復讐を誓うストーリー。これはWOWOWの「町山智浩の映画塾」で紹介されていて鑑賞ポスト📮です。ベルギーのJ・V・ドルマルの長編デビュー作で、カンヌ映画祭の新人賞に当たるカメラ・ドールに輝いた作品。
幼い頃から自らを名探偵トトでヒーローと思いこんでいる老人トマの回想形式で愛憎ドラマが構成されているが、記憶が曖昧なのかボケて思い込んでいるのか、妄想癖なのかはそこらあたりがまず怪しい虚実が入り混じる。町山さん曰く、「信用できない語り手」のナレーション形式でストーリーは進み、隣家のアルフレッドのせいで一家が不幸に見舞われたと信じているが実は彼の恋人を奪っていたり、最愛の姉を不幸に追い込んだり、実際はどうなのかは明らかにされない。
家族五人揃って幸福だったと回想する少年時代、飛行機乗りの父親が歌が得意でシャルル・トレネの「ブン!Boum !」を明るく歌い、花が踊るようにポップな映像もあり、暗い復讐劇の話なのになぜかエンディングも明るく感じられる不思議な感覚の作品でした。