トト・ザ・ヒーローの作品情報・感想・評価

「トト・ザ・ヒーロー」に投稿された感想・評価

のび

のびの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

この物語は、自分で自分の人生に評価を下してはいけないし、自分にとっては何気ないことでも、他人から見ればそれはかけがえのない幸福なのかもしれないことである、ということをわたしたちに突きつける物語だと言えるだろう。

あまり幸福とは言えない子ども時代を過ごした主人公のトマが、向かいの家のアルフレッドに羨望と恨みを抱き、本当はアルフレッドと取り違えられたのだ、自分の本当の人生はアルフレッドとして生きることだったのだと思ってしまっても、仕方ない面はある。

でも、トマがそんな悲しみを抱いているからこそ、姉のアリスとの関係は純粋で美しいし、父親がピアノを弾いて歌う場面は、ひときわ明るく輝いて見える。他人から見ればそれはかけがえのない幸福なことなのだと、老人になったトマがようやく人生の最後にそう気付いた。

そこでようやく、老人トマは幸福に包まれて自分の人生を全うすることができたのだ。わたしたちの目から見ると、それはひどく手遅れにも見えるが、トマにとってはそれだけで十分幸福だったはずだ。
521号

521号の感想・評価

4.1
映画は文字なき文学となり得る?

映画は人間の到達できる限界最高速度の芸術だ
なつ

なつの感想・評価

4.2
現在を、『昨日と同じ時間の今だ』と、表現した主人公トマ(トト)の、
ダウン症の弟くん。
彼が、一番真っ直ぐに世の中を見ていたのかもしれない。
♪ブン!夜明けの太陽にブン!
心が弾めば世界は薔薇色♪
何とも、幸せそうな楽しげな曲が
耳に残る。

トマさん、隣の芝生は青く見える。
そう教えてあげたかった。
中々、強烈な映画体験でした、これ。
アヒルはぴくぱく、ブン!♪
jumo

jumoの感想・評価

4.2
こんな好敵手なかなかいないよね!うらやましくはないがね!

(この主題歌、父の車でよくきく曲だったけど、この映画の曲だったとは!ただのご陽気な曲と思ってた!
全体的に暗い映画なのにBoumの明るさで切ないい映画に…)
老人ホームに入れられる孤独な男トマは、これまでの人生を振り返っていた。陽気な父と優しい母、しっかり者の姉と幼い弟と平凡ながら幸せに過ごした日々は、ある日を境に一変する。彼は確信していた、ある男の存在が自分の人生を台なしにしていると。老い先短い人生を見つめ、彼は、その男の復讐劇を想像する。1991年、白。

ベルギー映画は観る機会が少ないけど、ベルマル監督は「八日目」を観たことがあります。あれも好きだったけど、これもよかった。
ベルマルさんお抱えのパスカル・ドュケンヌ(ダウン症の俳優さん。八日目でも思ったけど、彼の演技は素晴らしいと思うの)もばっちり出てました。

ストーリーは老人の回想ではあるけど、やっぱりぶれにぶれる少年期の心の揺れが主軸で、見応えありました。
生まれた病院で火事を経験したトマ。物心つくにつれ、向かいの家に住む同じ誕生日のアルフレッドとの育ちの差が気になり、やがて自分とアルフレッドは火事の時に取り違えられたのだと思い込む。
確かにアルフレッドはガキ大将気質はあるけれど、根は素直でいいやつのはず。そんなアルフレッドに死ぬまで嫉妬心を燃やし続けたトマには、ある意味同情してしまう。

そして、基盤となる実姉アリスの存在。近親相姦と言わざるを得ない姉への想い、無垢だからこそ、観ながら「ダメ」とは言えない純粋さの応酬がたまりませんでした。ふたりのカットは特に良カットが多かった!
そんな姉がトマへの愛を証明するために命を落としてしまう。そのシーンで、「アリス!」と泣き叫ぶトマと対象的にアルフレッドの父親が燃え盛る納屋を見つめ「また建て直すさ」と呟くのが非常に辛辣。
崩れかかっていたトマの正常な感情は、きっとここで崩壊してしまうんだろうな。

ハリウッドで撮ればもっとスマートで観やすい映画だったかもしれないけど、ベルマルが撮るこの独特のタッチがよかった。
冒頭から映しだされる火事パニック。水にうつ伏せて血を流す男の体。
そういうエグいシーンも含め、ほんと教科書かと言いたいくらい、どこも完璧なカットが多かった。印象的なカットを言い出せばきりがない。

踏切を渡る電車越しに見える、アリスとアルフレッドの逢瀬。
革靴に落ちる涙。
追い越したトラックの荷台に広がる懐かしい大好きな光景。

トマの心の平和の象徴になる父が大好きな、フランスのシャンソン(シャルル・トレネの名曲らしく、いろんな映画で流れてる気がする)が随所で流れ、ちょっとおフランス映画な雰囲気がある。大人になったトマがアリスに似たエヴィエンヌに尋ねるシーン。
「君は恋の予感を?」
「恋なんて嫌。キスも嫌」
って言って車の中でキス!
エヴィエンヌは美人だけど、トマは冴えない男に成長してるからなんだかあまり胸が高鳴らない!
きっとダウン症の弟セレステンのほうがよっぽどユーモラスで楽しい男だと思うの。

まあ、そんな感じで老年期と少年期、壮年期を交えて話は進み、やがて復讐を誓うトマがたどり着いた結末がなんとも言えない。

いい映画を見た!まんぞく!
こういうのほとり座で観たいな。
taxx

taxxの感想・評価

3.6
主人公の語りで、晩年、過去、更に妄想も入り混じる思いの外シュールな作品。目まぐるしくも流れるような不思議なテンポ感。話もキャラも変わっているが、ラストに向かっての回収、収束がとても良かった。
santasan

santasanの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

人生にはいいことも悪いこともある。赤ん坊の時にアルフレッドと取り違えられたと信じるトマは、そのことを原因として自分が不幸だと信じていた。でも、それはそう思うから不幸を招いていたのではないか。嫉妬が原因で大切な姉を亡くした喪失感から似た面影の女性を追いかけるがそれも自ら逃してしまう。アルフレッドに向けていたと思っていた銃口は、結局は自分に向いていたのだ。でも人生とはそんなものかもしれない。
umematsu

umematsuの感想・評価

4.6
僕らの世界はブン♫
耳にこだまするブン♫
あー歌いたい。でもフランス語全然わかんないからブン以外鼻歌になっちゃうもどかしさ。大好きな姉の幻影を求め続けるトトの、空想と現実と過去と現在のミルフィーユ。切なさも喜びも悲しみも愛しさもやるせなさも、色んな感情が綺麗なマーブル模様になって渦巻いてる。どんなに歳を重ねても人生は苦くて甘い。

アリスの13歳とは思えない儚げな色香が素晴らしい。幼少期のトトも可愛い。ピアノを弾き歌うパパ、頭にお肉乗せちゃうママ、ウィットに富んだ弟と家族全員チャーミング。クローゼットの靴、パラシュートで庭に降り立つパパ、黄色いワンピース、アリスの作る花、トラックの荷台が開くとこは、胸に焼き付いて離れない名シーン!ラストの開放感も最高。
世界の見え方は自分次第
2017/09/30
>|