horahuki

オルカのhorahukiのレビュー・感想・評価

オルカ(1977年製作の映画)
3.8
お前は何者なんだ!

シャチvs船乗り。「銃?そんな卑怯なもん要らねぇよ!」と言わんばかりの漢と漢、海上タイマンバトルを繰り広げる言わずと知れた『ジョーズ』派生のアニパニ映画…なのですが、単なるアニパニではなく、種族を超えて通じ合ったもの同士一対一の閉じた「内なる戦い」を見せつける良作。超好き!

サメを捕まえた賞金的なもので借金返済してた主人公を船長とした一味は、シャチが儲かることを知り、学者や周囲の反対をよそにシャチ狩を決行。一頭捕まえたものの、それはメスで死に際に出産。妻と子どもを一度に失ったシャチ夫は主人公への復讐を開始する…。

冒頭の夕陽をバックにシャチ二頭が両側から真ん中に向かって跳ねるシンメトリーな美しさで既に虜に。その構図そのものが、シンメトリーが欠けることで物語が進行することを暗示し、欠けた均衡は主人公の心そのものだということが次第に明らかになっていく。シャチ夫が妻と子を奪われたように、主人公にも飲酒運転野郎のせいで突然妻と子を奪われた過去が…。

この過去が明らかになるタイミングで、どちらが勝つのか(勝たなければならないのか)という着地点が明らかになり、その結末に向かう「過程」をどう見せるのかという方向性に本作はシフトする。シャチから逃げ続ける主人公はシャチの対決をうける覚悟を獲得するに至るまでの過程において、家族に囲まれていた頃の自分から他人の家族を奪う存在へとなり下がった自分、つまり失った過去と現状の差から生まれる葛藤に悩まされつつも対決へ向かう。

だから本作の対決は過去の自分と現在の自分の対決であり、現実離れした空間にわざわざ舞台設定するあたりも、この寓話性を強調している。そこで主人公がシャチに向かって放つ「何者なんだ!」のセリフには、恐れおののくような態度も含めて、自分が何と戦い、どういった意味のある戦いなのかを確信していることが感じられ、グッと来るものがあった。サイコーなクライマックス!めちゃカッコよかった!
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