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クリーン、シェーブンのunknownのレビュー・感想・評価

クリーン、シェーブン(1993年製作の映画)
3.7
狂気に陥った男がめちゃくちゃになって少女を傷つけまくる話かと思いきや、これ…気の毒で哀れな男の残酷物語じゃんか…。自分は映画に出てきたクソ刑事や図書館司書のクソババアやクソ実母や車運転しながらジロジロ見てきたウエメセのクソ人間たちと同じ地平で主人公ピーターを見ていたんだ…自分はしっかりクソ側だったんだと気付き愕然とするラストですよ…。

ピーターが何故統合失調症を患い「頭に受信機、指に発信機」などの荒唐無稽な(だが本人にとっては切実な)妄想を抱くに至ったのか、何故刑務所(?)に入り、そして出てきたのか、妻は何故死んだのか、観る側には断片的な情報しかもたらされず、真実は分からない。冒頭で車にボールを投げた少女に暴行を加えたか、モーテル宿泊時に別の少女を殺害したか、その犯人は明確にはされてないし、ピーターがやったという証拠もない。ただ、人とは「全然違う」異物=ピーターがそこに居て何か行動を起こすたびに人々は焦り戸惑い、反撃(拒絶、白眼視、通報、銃撃等)を加えピーターを危険極まりない人物に認定するという事実が積み重なっていく。そしてとうとう彼は探し当てた実娘の前で、クソ刑事の放った銃弾により辛かった生から解放される。

殆どの観客が異常者だと思っていたであろうピーター。だがピーターにとっては異常なのは外の世界で、異常者なのは我々だったのだというシンプルな事実だけが残った。
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