まだ

クリーン、シェーブンのまだのレビュー・感想・評価

クリーン、シェーブン(1993年製作の映画)
3.0
幻聴に苦しむ男ピーターは、施設を出た後、自分の娘を探し続けていた。一方その頃、街では殺人事件が起きていた。事件を担当する刑事はピーターを犯人と疑い、追跡を始めるが…。

…………。

この作品は2人の目線で構成されています。

1人目は、幻聴に苦しむ男ピーター。彼の目線の時は、観ている人間にも彼の苦しみを追体験させるかのように、常にノイズ、不協和音、男や子供の声といった幻聴が鳴り響いています。その音は、車の中、ベットの上、家の中……どこに行っても付き纏ってきて、観てるだけで不快で、苦しい。加えて、ピーターの精神は常に不安定で、奇行(に見える行動)をとり続けます。車のドアガラスを割って新聞紙を張ったり、ルームミラーにテープを張ったり、ナイフで……(グロい展開)。彼の不安定な精神は、画面越しに伝染し、不安と苦しみを与えてきます。

2人目は、事件を追う刑事。彼はピーターを犯人と疑い、追い続けるのですが、彼の目線は、いわば「平常な人間」の住む世界。この目線によって、ピーターの過去と、彼が世間にどう見られているかが、客観的に解き明かされていきます。それは、私たち自身が街で見かける「少し変わった人」に向ける目線に近い気がして、少し後ろめたくなりました。

また、ストーリー自体は、ピーターが本当に殺人犯なのか、分からぬまま進むサスペンスなのですが、ピーターの抱える苦しみと、周囲の人間の不理解を引き立たせるような展開で、観た人間に虚無感を残します。

なお、ピーターの症状は、統合失調症に分類されるようです。統合失調症の方が住む世界も、ピーターが住むような世界なのか。それは私には判断できませんが、もしそうだとしたら、なんという苦しみなのだろう………と。

常に苦しみと不安が付きまとう映像で、疲れましたが、不安定な精神世界を追体験させるような、なかなかない映画体験でした…。

※『アングスト/不安』の路線ですが、今作の方が静かに重く、心にきました…。