よしまる

アンナのよしまるのレビュー・感想・評価

アンナ(1966年製作の映画)
3.6
 この映画の凄いところは、既にヌーベルヴァーグのミューズとしての地位を築き、もう20代後半になりしっかり脂の乗った女優として本格化していくような段階で、まるで10代の売出し中アイドルみたいな映画(元々はテレビドラマ)を大人たちが大真面目に作っていることだ。

 90年代にネオアコや渋谷系が流行った頃もそうだし、最近のレトロフューチャーなんかもそうだけれど、いつ観ても楽しくハッピーな60年代スタイルのアイコニックなファッション映画として色褪せぬ輝きを持っているのは、コスプレや音楽に心血を注ぎ、アンナカリーナの魅力を引き出すためのあらゆる手立てを尽くしたからに他ならない。誤解を恐れずに言うなら、ちょっとdisってますww

 例えばこの映画を観て「フン!カワイイだけじゃん、つまんね」と思ったとしたら、それはおそらく正しい。実際、それ以外に何もない。
 けれどもじゃあ、あの時にこんなセンスの映画を誰が作れたかというと、作家主義を標榜したヌーヴェルバーグの旗手たちではなく、たまたま監督したのはピエールコラルニクであり、ここに集ったゲンズブール(脚本と音楽)やウィリークラン(撮影)らを抜きにはなし得なかった。
 話にならないストーリー、グダグダな編集、そんなこともすべてアンナの魅力のために用意されているかのよう。
 ハリウッドのゴリゴリに作られたアイドルではなく、どこにでもいるような(いないけど)女の子を、どこにもいないように存在させたという点でやはりこれはアイドル映画の究極形の一つ。

 カメラ目線でポーズを決める彼女と、すれ違う列車の突風にビックリして演技どころではない彼女が同一線上に存在しているのがたまらない。誰もが、とは言わないけれど、男ならこんなふうに女の子をカメラに収めたいと一度は思うのではないだろうか。(え、ボクだけ?これセクハラ?)