闇の帝王とその従者に命を狙われるという悪夢にうなされるHarry (Daniel Radcliffe)。クィディッチワールドカップ決勝戦の夜に打ち上げられた《闇の印》。魔法界に闇の帝王の気配が忍び寄る中、新学期を迎えたホグワーツでは《三大魔法学校対抗試合》が100年ぶりに開催されると宣言される。死者が出る程に危険な試合の裏には、更に恐ろしい陰謀が隠されているのだったー。
ー Hogwarts has been chosen to host a legendary event "the Triwizard Tournament."
◆ I love magic.
四年目の魔法界を紡ぐのは、初の英国出身監督であるMike Newell。キャストは皆イギリスないしアイルランドに縁のある俳優であることに拘って制作された(今作で登場する仏のボーバトン魔法アカデミー、北欧のダームストラング専門学校の関係者を除く)本シリーズにおいて、遂に英国人の監督が抜擢されました。
原作小説は今作から上下巻の長編になるのですが、1,160頁(日本語訳版)におよぶ内容を157分の尺で大きな違和感なく収めた手腕は見事です。
Hermione(Ema Watson)が設立した『屋敷しもべ妖精』の権利向上を目指す《屋敷しもべ妖精福祉振興協会》の件は全カットでした。よって『秘密の部屋』で活躍したDobbyの再登場は無く、"ナメクジげっぷ"のRon(Rupert Grint)から「SPEW(反吐)」とバカにされるシーンもありませんでした。ちょっと残念。
いい加減な記事をでっち上げる日刊預言者新聞のジャーナリストRita Skeeter(Miranda Richardson)とHermioneの女の戦いも全カット。彼女が《コガネムシのアニメーガス(動物もどき)》であることも明かされず、性悪で嫌味ったらしい性格も随分マイルドになっていました。
削ぎ落とされたエピソードや設定は多くありました(主にHermioneの見せ場)が、それでも物語の本筋は損なわない仕上がりになっていたと思います。どんより曇った空模様。宵闇の決闘。晴れ間が指すラストシーン。ベタですが全編を通して丁寧に雰囲気が作られていたと感じます。
◆ Never gonna let him forget this are you?
ーNever.
Harry、Ron、Hermioneの三人は ホグワーツの四年生になりました。十四歳になった彼等はザ・厨二。思春期街道大爆走中です。
男の子は人気のスポーツ選手(クィディッチワールドカップ)に夢中だったり、気になる女の子ができたり、嫉妬したり、喧嘩したり、意地を張ったり、仲直りしたり。不器用で、素直じゃなくて、どうしようもない彼等を横目に「Boys!」とかましたHermioneの表情がナイスすぎる。
僕もしょうもないBoysの一人なので、しょうもないことを言わせてもらうと、Harryが想いを寄せるCho Chang(Katie Leung)は思っていたよりも可愛くなかった。英国人に好まれるアジア系のお顔立ちなのかな?一方で、原作小説では「絶世の美女」「ヴィーラ(美しい魔法生物)の血を引いている」と形容されていたボーバトン魔法アカデミーの代表Fleur Delacour(Clemance Poesy)は本当に美女でした。
仲良し三人組の間にほんのりロマンスの香りが漂い始めるのも今作から。《三大魔法学校対抗試合》の目的は、「代表選手の魔法技術、知力、勇気をはかること」のみならず、「国際交流を通して学校間の親睦を深めること」も含まれていました。社交の場として設けられたクリスマスのダンスパーティーはめちゃくちゃ楽しそう。はしたなくはしゃいではめはずしそう。はしたくはしゃいはしゃしゃしゃしゃ。
◆ Every time I get close to an answer
ー it slips away, it's maddening.
今作の肝である《三大魔法学校対抗試合》は非常に見応えのあるものでした。ホグワーツ魔法魔術学校、ボーバトン魔法アカデミー、ダームストラング専門学校の各校から、炎のゴブレットにより一名ずつ代表選手が選出される。三つの危険な課題を攻略し、見事優勝した者には永遠の栄光が約束される。
安全の観点から17歳以上の魔法使いまたは魔女でなければ参加出来ないとされる中、存在しないはずの四人目の代表選手として、まだ14歳のHarryが選ばれます。命懸けの危険な大会の裏に潜む影は、聡明な大魔法使いであるAlbus Dumbledore(Michael Gumbon)をもってしても薄ぼんやりと霞んで捉えることが出来ません。
二作目で登場した《ポリジュース薬》の存在を匂わせ、Sirius Black(Gary Oidman)が不安を煽り、危険な《三大魔法学校対抗試合》の裏に渦巻く陰謀をよりスリリングなものにしていました。
上下巻二冊におよぶ原作小説を一本の映画に仕立てる都合上《闇の帝王の復活》にフォーカスしすぎたが為に「Crouch父子の狂気」が削ぎ落とされてしまっていたり、「第三の課題がモンスターの出てこない唯の迷路("people change in the maze"としてダークな色を付けてありましたが)」に格下されていたのは勿体ないと思いますが。
◆ Lord Voldemort has returned.
Bones of the father unwillingly given.
Flesh of the servant willingly sacrificed.
Blood of the enemy forcibly taken.
ー The dark lord shall rise again.
『賢者の石』『秘密の部屋』で闇の帝王の復活を見事阻止したHarryでしたが、『アズカバンの囚人』で主の元へ馳せ参じた下僕の助力によって、遂に闇の帝王が復活します。
担当した教授が一年で失踪ないし退職してしまう《闇の魔術に対する防衛術》の授業を担当するのは《元闇祓い》Alaster "Mad-eye" Moody(Brendan Gleeson)。
︎︎︎︎︎︎☑︎ 服従の呪い インペリオ
︎︎︎︎︎︎☑︎ 磔の呪い クルーシオ
︎︎︎︎︎︎☑︎ 死の呪い アバダケダブラ
人に対して使用した者はアズカバンで終身刑を受けるに値する《許されざる呪文》が紹介されます。映画版では随分マイルドというか漠然とした紹介のみに留まっていたのは、尺云々だけではなく観客への配慮もあったんでしょう。これらの恐ろしい呪文を躊躇なく使用してくる《闇の帝王》そして《死喰い人》との決戦に向けたイントロでした。
Dark and difficult times lie ahead.
Soon we must all face the choice
between what is right and what is easy.
But remember this
"You have friends here. "
"You're not alone."
ー行く手には暗く困難な刻が待ち受けている。我々はすぐに正しい事と容易い事との選択を迫られる。だが忘れてはならない。
"ここに友がいる。一人では無い。"
元々は児童向文学作品であった原作小説が、本作を皮切りに本格的にダークな世界をあらわにしていきます。主要キャラクターが主人公の眼前で死亡してしまうのも今作が初めて。でもそれは作品の主人公たちが児童から青年へと成長していくのに合わせて、作風を上手くコントロールしているのだと思います。なればこそ、大人であっても魅了される。Harry Potterという作品が持つ魔法だと思います。
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さーきとよーだのハリポタマラソン。
四年目にして遂に闇の帝王が復活!
原作で一番好きだった今作。諸々カットされているのは残念だけど、まぁやむなし!
Sakiちゃん今回もありがとう!
次回以降も宜しくね!