映画おじいさん

金星ロケット発進すの映画おじいさんのレビュー・感想・評価

金星ロケット発進す(1959年製作の映画)
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ゲテモノ映画かと思っていたら真っ当なメッセージ映画な上に好みの感じで楽しめました。
とはいえ真面目過ぎる(谷洋子の裸背中のサービスカットはあるけど)というか素人映画クサくてある意味ゲテモノ。
『不思議惑星キン・ザ・ザ』みたいなのとも全然違った。

谷洋子が親を広島の原爆で亡くし自らも被爆者で子供が産めないということで、さりげなくというより徹底的に原爆反対を唄っていた。

当時の共産圏なら反アメリカかと思っていたらそんな事はなく「金星問題は一国の問題ではない」と考え方を超えてあらゆる国と手を取り合おうというスタンスがよかった。

あと、国際色豊かなキャストで人種平等は見ての通り、女性のTVカメラマンがいたり谷洋子が船員として同等だったり時代の割には男女平等も進んでいたようにも。

関係ないけど「人種差別をしないのはアカ」というような台詞がある多分同じ頃製作の映画があったと思うけど何だったけ? 多分邦画…。

登場人物のキャラ説明不足でイマイチ分かり難かったり(黒人船員が待つ女性?とか)、演出とかカメラワークとかがガタガタで特に後半は眠くなるのは仕方ないけど、そんな感じさえも独特で私は大好きでした。

『サウンド・オブ・ミュージック』みたいな山間の野原でおっさん二人が腕を取り合ったりして宇宙飛行のことを話し合うシーンは偶然なのか。狙っていたのか。

特に好きなシーン : 宇宙飛行中、人工知能ロボットと船員がチェスに興じる。何度やってもロボット全勝。それを見ていた谷洋子が「このロボットには何かが足りない…そうだ、魂だわ! 魂があれば一度くらいチェスに負けるはずなのに!」みたいなことを言うところ。

(以下、激しくネタバレ)

地球ではなく金星だけど、文明が発達し過ぎて自滅してしまうという発想(それも核で)は『猿の惑星』(9年後の1968年製作)と同じ。アメリカでも公開されたというから、まさか影響を与えたりしてて。

ついでに言えば最近『最後の家族』(2016年ポーランド)を観たので、荒れた金星の風景がベクシンスキーの絵に近いようにも思えた。まさかベクシンスキーにも影響を与えたりしてて。