ほーりー

昼下りの情事のほーりーのレビュー・感想・評価

昼下りの情事(1957年製作の映画)
4.2
『おしゃれ泥棒』に引き続いてオードリー・ヘプバーンの映画を。

この『昼下りの情事』というどぎつい邦題については談志師匠が生前テレビで「『午後の恋』でいいじゃないか!」と文句を言っていたのを見たことある。

で、本作より共同脚本としてI・A・L・ダイアモンドという不思議な名前のライターが加入したことにより、まさにブースターのようにビリー・ワイルダーの監督としてのキャリアが長く続くことになる訳であります。

さて、あらすじ。

私立探偵の父(演:モーリス・シュヴァリエ)をもつ音大生のアリアンヌ(演:オードリー)は興味本位で父親を訪ねに来た依頼人の話に聞き耳を立てたいた。

父親との話からその男は妻の浮気調査を依頼した夫で、父親の調査の結果、奥さんはクロで浮気相手はプレイボーイで有名な米国人社長のフラナガン氏(演:ゲイリー・クーパー)であることを知るアリアンヌ。

妻の浮気に愕然とする夫は拳銃を取り出して、フラナガンが滞在するホテル・リッツへ乗り込む。驚いたアリアンヌはフラナガンを助けようと先回りして一芝居をうつのだった。

とまあ本作もまた『おしゃれ泥棒』 同様、パリのホテル・リッツが物語の舞台になっている。

不倫調査の探偵役にかつて師匠ルビッチの作品で色男ばかり演じたモーリス・シュヴァリエを起用したこともミソである。

昔観た時には、オードリーとクーパーの立場が逆転してからが滅茶苦茶面白くて、それより前段は少し冗長にも感じたが、改めて観ると小ネタが色々仕込んであって十分楽しめた。

何と言っても巧いなぁと思ったのは、四人のジプシー楽団の使い方である。

ほとんど本作の笑いはこの四人によるものと言っても過言ではないが、今回見直して、ギャグ要員に留まらないことに気づいた。

ゲイリー・クーパーって私生活はかなりプレイボーイだったらしいけど、スクリーンに映し出されるイメージはやはり物静かな正義感キャラを拭えない。

それを補うのが前述の四人組で、彼らが甘美な音楽"ファスチネーション"を奏でることにより、不思議とクーパーが恋多き男に見えてしまう。完全にワイルダーの計算勝ちである。

あとオードリーの演技も昔はそう感じなかったけど、ラストシーンでの演技など感情注入が実に見事。観ていて胸が張り裂けそうだった。

それにしてもこの映画を観ると、必然的にこの映画のことが大好きだった和田誠や談志師匠を思い出す。

今ごろあの世で再会してワイルダーについて語り合っているような気がする。

■映画 DATA==========================
監督:ビリー・ワイルダー
脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド
製作:ビリー・ワイルダー
音楽:フランツ・ワックスマン
撮影:ウィリアム・C・メラー
公開:1957年6月30日(米)/1957年8月15日(日)
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