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巨星ジーグフェルドのkyonのレビュー・感想・評価

巨星ジーグフェルド(1936年製作の映画)
3.5
1930年代に亡くなったブロードウェイの興行王、フローレンツ・ジーグフェルドの半生を描いたMGMの大作作品。

約3時間で描かれるのは若きジーグフェルドが自らのサーカス団の興行を成功させ、NYへ渡り、激しい女性関係や資金難に幾度となく直面しながらも自らの名を冠したジーグフェルド・ショーの大ヒット、そしてその後の顛末まで。


アカデミー賞の作品賞なども受賞してる『巨星ジーグフェルド』ですが、まだアカデミー賞に衣装賞がなくてノミネートも受賞もなかったけど、この作中の壮大なセットに負けないくらいドがつくほどお金を注ぎこんだんだろうなと容易に想像できるエイドリアンの衣装を堪能できる1作。

映画だからこそ、夢の女を創出する、という華やかで思わず女性なら溜息が出てしまうような華美な衣装をデザインしてきたエイドリアン。

そんな彼がまさにブロードウェイの舞台の衣装をやったらこうなるぞ!というくらいステージ・シーン(3〜4種類くらい見せてくれる)
が素敵!

美術もすごくて、風船に囲まれたセットから風船が客席に飛ばされて、お客さんが風船を引っ張っていくとダンサーの女の子たちが登場!みたいな、で女の子たち揃いも揃ってチュールやシフォンなど軽やかな衣装を纏っていて、目が楽しい!

ギリギリカラー映画になるかどうかみたいな瀬戸際の時期で、こちらはモノクロなんだけど、こういうヴィジュアル的に大作な作品はモノクロの方が”映画の夢”としての効果が強いなとふと感じる。

多分この作品の場合は、
舞台が題材だから、実際に舞台をカメラで映してるから、カラーだと良くも悪くもリアリティが出ちゃうのかも。


で、内容に関しては、なかなか難しく、素直に素晴らしい!とも言いづらい…笑

それはこの作品における主役のジーグフェルドの人物造形が曖昧で、舞台のためなら女優やダンサーたち関係なく甘い顔を見せるし、融資のために手八丁口八丁、みたいな人物なんだけど、あまりにも彼の側で花開く女性たちが幸せに見えなくて…。

なんかわかる、きっとブロードウェイという世界の特性上、ジーグフェルドみたいな男性が才能を発揮して、成り上がる!っていうのは説得力があるはあるんだけど、彼のその女性にだらしない部分をも相殺するような魅力的な場面があまり描かれてないような気がして、半生を描いているからリアリティ重視かもしれないけれど、女性たちにちょっと救いを…!

パークは子供も生まれて、まだ(ラストの先はきっと苦労するんだろうけど)幸せ、というか良い奥さんだなぁ、ってわかるんだけど、最初の奥さんのアンナはなかなか観ていて辛かった笑

もう少し舞台制作の繋がり(ジーグフェルドが目指すショーの方向性とか彼の審美眼とか)があると外側(視覚的な面)と内容とか合致してきていて面白いのかなと思いつつ、映画のコスチューム史に残る作品であるのは間違いないし、むしろ当時のハリウッドのスタジオが黄金期であることがすぐにわかるから、観て損はないです◎
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