ケンヤム

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にのケンヤムのレビュー・感想・評価

5.0
「逃げちゃダメだ」で広げた大風呂敷を「気持ち悪い」でぐちゃっと力技で畳む。
他者との関わりのグロテスクさ。
飛び散る血は美しい。
腹から飛び出る内臓はあの花のようなピンク色。
ピンク色といえば、旧劇版では初めてアスカとレイのまっさらな乳房にピンク色の乳首が付いていた。ピンク色の乳首は、内臓と同じ色だ。肉体という境界からはみ出るピンク色の乳首は内臓が他者と触れ合いたいと我慢できず飛び出てきた接着点だ。人間の祈りだ。だから、神は乳首に性感帯としての役割を与えたのかもしれない。「ここを触ってくれ」と乳首が吠えている。ふざけてますか?ってあなたは思いましたか?ふざけてるに決まってるよそんなこと聞くなよ気持ち悪いな。
前向きなラストと思いたいなら思えばいい。俺たちは、気持ち悪いんだ言葉どおり受け取れ。
「気持ち悪い」という言葉は、人間の可能性か?いいや、違うよ。
それでも、アスカの首を締める、他者との関わりから逃げ続けるシンジへの罰だ。人間の存在し続ける可能性の証明ではなく不可能性の証明だ。とても残念だが。
境界の融解。境界の誘拐。教会の幽界。
境界の融解は身体欠損だ。身体が壊れるとき自由になる。そんな覚悟もない奴が、他者と触れ合いたいなんて思うんじゃねぇ。気持ち悪い。
フィクションとノンフィクションが交互に映されるとき私たちは、そのフラッシュバックを視神経から脳神経を経由して前頭葉かどっかわからんけどそこらへんに受信し分析して、その境界をなかったことにしてみる。映画は現実で、現実は映画になったと思いたくなる。その感覚に他者との関わりを比喩してみたくなる。他者は自分で、自分は他者だ。みんなちがってみんないい。Oneteam!ってさ。
映画はコミュニケーションだとゴダール は言いました。
今俺はエヴァンゲリオンを見たから反論できるよ「映画はお前らのオナニーだろ。」って。いいや違うな。オナニーはいいな平和主義で。自分で出してティッシュで拭けばいいだけだ。こう言い換えた方がいいか。「映画はおまえらのレイプだろ。」って。気持ち悪い。
人類補完計画完了。いいや、庵野秀明補完計画完了。気持ち悪い。
おめでとう。旧劇版気持ち悪いとテレビ版おめでとう。この世を構成する気持ち悪いとおめでとう。拒否と贈与。あなたはエヴァンゲリオンを観た後どちらを選びますか?
エヴァンゲリオンは終わらないけどね。
ケンヤム

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