つかれぐま

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にのつかれぐまのレビュー・感想・評価

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YOU DO (NOT) SYNCHRONIZE.

監督が作品に自己投影することは珍しくない。だが、ここまでやり切った(内面の全てをさらけ出した)作品はないんじゃないかな。スクリーンにそれを映しだす。その勇気には感服したい。

なんというか「カウンセリング映画」。我々は87分間、庵野秀明というクライアントのカウンセラーとなり、彼の心の叫びを傾聴する。誤解を恐れず言えば、これは決して楽しくない辛い作業だ。エンタメでもアートでもない、形容しようのない何かを見る体験。

映画にはテーマと物語がある。
「良くできた映画」はその両方を(シンクロ率100%で)まとめて終わるものだ。その公式にあてはめて言えば本作は、壮大にぶち上げた物語をまとめ切ることなく、一方のテーマは、作者=シンジが身も心も裸になって、あれやこれやと色んなものを吐き出し、文字通りの「賢者タイム」で終わるという「気持ち悪さ」の徹底ぶり(半分誉め言葉)。テーマと物語が全くシンクロしない終わり方なのだが、物語を畳まなかったのは、果たして意図なのか放棄なのか?それは分からない。ただ、このほうがテーマがより心の奥まで浸み込んできたような・・そう思えたかな。

自己と他者のシンクロは難しく、且つそれが絶対正解ではないようにね。