みかんぼうや

夜のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

(1961年製作の映画)
2.6
【離れゆく心を確かめる数日間。とってもお洒落で最も苦手なタイプの映画だからこそ気づかされる映画鑑賞の醍醐味。】

イタリアの巨匠ミケランジェロ・アントニオーニ監督作に初挑戦・・・でしたが、うわ~、全然楽しめなかった。いわゆる最も苦手なタイプのお洒落でちょっとすかした、男女関係を描いたヨーロッパ映画。

物語は倦怠期に突入した有名作家とその妻が、かつて愛したパートナーから離れゆく自らの心を確かめるかのような数日間を描いていきます。説明的でなく、画面上の2人の行動や表情、微妙な間から発せられる心の動きや微妙な関係性はヨーロッパ映画らしく、演出も構図もお洒落でアーティスティック。会話も時にポエティック。バックミュージックで流れるジャズがその雰囲気に拍車をかける。

・・・なのですが、人それぞれが持つ嗜好には抗えませんね。一言で言うならば、「回りくどい」と感じてしまいました。こういう作品は“考えるな、感じろ”の世界なのかもしれませんが、興味を持てる登場人物もいない、物語の展開にも面白さを感じない、とくると芸術性や雰囲気で押されている感があり、逆にストレートに中身が入ってきませんでした。

一時期、こういう作品を観ると、“映画通が好む映画”、“大人が楽しむ映画”という言葉が頭に浮かび、もっとこういった作品を楽しめるようになれたらと思うこともありましたが、無理に楽しむことなんてできないだろうと、本作のような作品を観るたびに、その感覚も無くなってきました。

私は音楽が大好きで、特にロックとジャズは延々と聞いていられるものが多いですが、演歌は苦手ですし、クラシックは大好きな曲もある一方、大半は長くは聞いていられない。もちろん、ロックの中にも大好きなバンドとそうでないバンドもいますし。チャーリー・パーカーを好きな人がRADWIMPS好きと比べて音楽通なわけでも大人なわけでもない。ただそこにあるのは、好みかどうか。聞いている音楽の量やジャンルが多ければ、その分、知識量は増えるし、音に対する感覚は鋭くなったり嗜好の幅は広がるかもしれないですが、それでも最終的に好みかどうかはまた別の問題。

それと同じ。合わない作品、合わない監督はいかに巨匠だろうと世界的に評価が高かろうと合わないと。鑑賞中にも、ふとそんな気持ちを抱きました。そんなことを考えるくらい、内容に集中できていなかったのですが。

ですが、知らないこと、経験しないことで、実は自分の嗜好にドンピシャな素晴らしい作品やマッチする作風の監督をスルーしてしまうのはあまりにももったいないという思いがあります(これもあくまでも個人的な関心で、他の方の観方とは全く別の話です。好きなジャンルや監督・俳優を徹底して楽しむ観方もまたあると思いますので)。

だからこそ、ジャンル問わず、国を問わず、色々な作品を試してみる冒険的な楽しさがあることもまた、映画鑑賞の醍醐味。そんなことを思った本作でした。

そして、そんな私には食わず嫌いの中で最大のジャンルに育ってしまった「マーヴェル」が頭の中でちらつき始め、そろそろ挑戦してみようかな・・・と思っている今日この頃です(作品があまりにも多く、何から観るべきかすら分かっていないのですが)。
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