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NINEのotomisanのレビュー・感想・評価

NINE(2009年製作の映画)
3.8
 墜ちた巨星の回生映画「NINE」は撮影開始1秒で終わってしまう。その2年前、筋も思い浮かばず悩みに悩んで1フィートも撮れずに終わった「ITALIA」は、歌って踊ってロブ・マーシャルまで動員して2時間も持ったのにえらい違いだ。

 おおかたフェリーニをからかうつもりでいたんだろうが、「8と1/2」でF.は'63年世界が急旋回する中、撮れない事を自らからかい倒しながら荒唐無稽な〆で人類大爆笑と全て笑い飛ばしてしまった格好なのに、それをなぜ殊更深刻気に撮れない悩み?更年期?ミューズ様違背?才能枯渇にわざわざ「NINE」パートにまで跨って付き合って見せたのか?ロブが死んだらフェリーニはあの世で一生ロブをからかいのめすだろう。

 ただ、問題はそんなことより、「NINE」を撮影1秒で閉じてしまった事にある。「ITALIA」の憂さをぶっ飛ばす舞台一幕の勝負を掛けずにアメリカーナは何をやってるんだろう。
 F.は、ロブにあっては深刻な問題としたところを寧ろお祭り騒ぎのごった煮を振舞って済ませてしまう。F.によるこの軽快な不定解問題にロブが気付かないとは到底思えない。しかもそれを敷衍せず、つまりロブ的超「CHICAGO」級大解決をパーッとやらかさないで、一番つまらな気な正体不明の「フェリーニもどき」を初心に帰ったつもり演出?魔女の如きマンマ(ミューズの代わり?)とちびっ子F.(サラギーヌからへんな病気もらってないよな?)を御付きに従えて始めようとしている。この予感に悪寒が走ってしまった、なんちゃって。

 「NINE」瞬殺とは、F.的大回天を果たせない?敢えて果たさない?それはそれで一種のヨイショだろうが、それとも、やっぱり敵わねえかなぁ?と怖気が頭をよぎったロブの自虐の表れだったかも知れない?
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