Lynne

マルホランド・ドライブのLynneのネタバレレビュー・内容・結末

マルホランド・ドライブ(2001年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

これはやられた。完全にリンチの世界に引きずり込まれた、デヴィッドリンチ2作目。

かつナオミワッツが本当にすごい。役者ってここまで変われるんだって思った。幸福も、狂気も、とても同じ人には見えない。すごい役者…。


※追記 2回目(25.11.2018)

1回目は衝撃的な構成についていくのが精一杯だったけど、もう一回観たら色んな細かいところがわかったし、何よりダイアンに感情移入できる。謎だらけの構成を紐解けば、それだけじゃない、ちゃんとした登場人物たちの思いがあって、私がこの映画が大好きな理由もそこにある。これはダイアンのカミーラに対する、大好きで、羨ましくて、憎くて、大嫌いで、それでも大好きなどうしようもない思いが詰まった映画。

まず最初のダンスシーンと白い写真は、ダイアンが故郷のダンス大会で優勝したという唯一の成功体験。そこから、ベッドと枕のクローズアップは、おそらくベッドに倒れ込むダイアンの一人称視点。それ以降は、青い箱を開けるまで全てダイアンの夢。

意気揚々と乗り込むハリウッドも多分想像で、現実にはあんな粋なタクシードライバーもいなかっただろう。あの老夫婦は両親なんじゃないかな。冒頭の白い写真と似てるし、最終的にダイアンを追い詰める幻覚もあの2人だったし。きっと応援して送り出してくれて、故郷で自分の成功をまっすぐに期待しているであろう2人の存在は、何もかも上手くいかなくて、挙句大好きだった人を殺してしまったどん底な今の自分にとって重すぎたんだと思う。

冒頭の交通事故のシーンと、あのアホな殺し屋は、ダイアンの暗殺がどこかで失敗して欲しいという気持ちの表れだろうな。それでもう一度自分のところに戻ってきてくれたら。もう一回やりなおせたら…っていう。

青い箱は、ダイアンのカミーラへの気持ちが詰まった全て、だと私は思う。だからクラブシレンシオで泣き女の歌を聴いた後、ごく自然に鞄から箱を出す。それをカミーラに渡すと、ダイアンは姿を消す。ダイアンは、もう愛も、憎しみも、嫉妬も、カミーラを殺したのが自分だということも、本当は全部全部カミーラに言ってしまいたかったんだと思う。青い鍵は殺しの象徴であると同時に、ダイアンの思いを知るための鍵。
だから夢の中ではそれを伝えられたから、もういいかって姿を消す。ダイアン自身、その夢の中にずっとはいられないことくらい分かってたはずだから。

そのあとおばさんが現れるのは、夢の中でダイアンがおばさんの家を借りて住んでいたことに繋がる。ダイアンがおばさんの部屋に住んでいたのはおばさんが留守の間。だからおばさんが帰ってくることで、その部屋での生活は終わり、つまり夢の終わりを表してると思う。

あの黒い男は(役者は女だけど)、罪悪感とか、そういうダイアンの負の感情の象徴的なものだと思う。だから殺しを依頼したダイナーの陰にずっと潜んでる。最後に青い箱を袋に入れて捨てるように落とすのは、本当は伝えたかった思いが現実では伝わることはなかったし、カミーラは死んだことを表現してるのではないかと。

ダイアンの夢の中には、逃げ切れない現実がところどころ表れてて。リタの鞄の中身のお金と青いカギは、カミーラを殺したことを示すものだし、「寝たら全て元どおりになると思ってた」っていうのも、多分ダイアンの気持ち。オーディションのセリフが、"Get out, before I kill you. I hate you, I hate both of us"っていうのも、偶然のセリフにしてはできすぎてる。

そしてこのダイアンの夢は、同時にクラブシレンシオの上映内容でもあったんじゃないかな。ダイアンが自殺したあと、クラブシレンシオと同じ白い煙と、青い雷みたいな音と光、そしてシレンシオのカーテン、マイクスタンドと同じ位置のベッドのポールがオーバーラップするし、映画の最後は客席ににいた青い髪のおばさんで終わる。そしてクラブシレンシオでのできごとは、すべて"まやかし"だから。
Lynne

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