すずき

U・ボートのすずきのレビュー・感想・評価

U・ボート(1981年製作の映画)
4.3
舞台は第二次世界大戦中のナチスドイツ軍、ゲルマン民族の最高知能の結晶であり誇りである潜水艦、Uボート。
従軍記者ヴェルナーは、新造艦のUボート・U96に乗り込む。
他の水兵たちは、多くが経験の浅い若者ばかり。
出港前夜に浮かれる若者たちだったが、戦局が芳しくない事を知っているベテランの艦長は、ナチス思想に心酔してイケイケムードな上層部を憂いていた。
そして出港の日、50名のクルーとU96は、果てしない海と戦いの中に身を投じるのであった…

上映時間3時間30分のディレクターズカットVer.で鑑賞。
とっても長いけど、ずっと面白かった!

最初に思ったのは、Uボートって案外小さい!
上甲鈑には人が立てるけど、50名2列でいっぱいいっぱいで、細いから落ちちゃいそうだ!
そんなだから当然中も狭い。
所狭しと物資が置かれ、司令室まで干し肉やソーセージがぶら下がっている。
ご飯食べてても席を一々立たないと、人の往来が出来ない。
そんな油と潮と漢の臭いがこもった潜水艦の中の、狭息苦しさと極限状態の恐怖が伝わってくる。

潜行中の潜水艦の戦闘は、静と動の繰り返し。
外が見えないので、音だけを頼りに耳を澄ませて聴音、こちらも音を探られないように、クルーたちは息を潜める。
そんな中、頭上の駆逐艦からの爆雷が突如爆発!轟音と悲鳴で静寂はかき消える。
そしてダメージを受けた船体からは浸水し、艦長は声を張り上げて指示する!
さらなる追撃を避けるため、船は更に潜行、爆音は遠のき、再び静寂へ。
だが水深200mも過ぎると、今度は水圧に曝された船は軋み、イヤな音を立てはじめる…

画的には地味な、潜水艦内の映像だけど、ただ息を潜めてじっとしているだけのシーンでも緊張の糸が張り詰めているのは映像ならではで、漫画や小説では得られない面白さだった。
そしてそんな絶え間ない緊張は、見ているものの精神をも圧迫し疲弊させるので、無事戦闘が終わったときの、クルーとともに感じる生への充足感も一入だ。