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ヒルズ・ハブ・アイズのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

ヒルズ・ハブ・アイズ(2006年製作の映画)
3.4
【あなたのヒルズハブアイズはオリジナル派?リメイク派?】

2000年以降の売れっ子ホラー監督組には、名作ホラーのリメイクが登竜門となっている風潮がある。フェデアルバレスは『死霊のはらわた』をロブゾンビは『ハロウィン』をそしてピラニア3Dやクロールでお馴染みアレクサンドルアジャはウェスクレイヴン監督の『サランドラ』を担当した。

本作で最も力を入れているのは、やはり人体破壊描写だろう。サランドラでは背景として添えられた設定の数々は、そのシチュエーションを撮りたいがための導入として使われたクリシェに過ぎなかった。核実験により被害を受けた奇形人間っぽいビジュアルをヴィランにしたかったウェスクレイヴンのクリシェを本作はテーマ的に広げたかったのであろう。故に力の入った奇形人間の特殊メイクは本気で恐ろしいのだが、この映画が最もバイオレントな攻撃を繰り出すのは、あのオープニングクレジットシークエンスだと思う。
ユルーいサーフロックに『博士の異常な愛情』のラストみたいな実録風核描写を写し、見るに耐えない奇形赤ちゃんがサブリミナルで挿入される。本作が語りたいテーマ的メッセージ性が十分すぎるくらい提示され、異様なほど脳裏にこびりつくと同時に、この先は楽しいスプラッターを展開させられるというちょっとした目配せの役割もある。

さて、本作のリメイク術は良くも悪くも、ガスヴァンサント『サイコ』さながらにオリジナルを踏襲しまくる。細かすぎて伝わらない一悶着さえなぞらえ、オリジナルの雑さを丁寧に修正し、恐怖演出の布石を打つ。もちろんホラークリシェにも忠実で「ケータイなんて国土9割カバーしてんのに、よりによってここが圏外なんて、ありえねー」とわざわざ不自然さを指摘してくれる。そんな中、家族間の噛み合わない会話から一抹の不協和音を紡ぎ出し、得体の知れない存在と対峙していくセッティングを確かなサスペンス力で施してゆく。

前半のワクワク恐怖演出は秀逸ながら、問題が発生し、オリジナルでは荒野でミニミニマッドマックスごっこみたいな荒削り弱肉強食がトチ狂ったカオスを生み出す、どこか即興的な展開が魅力だった。故に、丸々踏襲されると、段取りの割にオチが弱かったりするのだ。なので、二手に分かれてる間に赤ちゃんが攫われるくだりも、丁寧すぎ予定調和に見えてしまうのだ。せっかくオリジナルにはなかった無数の巨大クレーターの窪んだ空間や朽ちたトロッコなんかのアクション映え要素は十分あったのだから、本作独自のツイストが欲しかった。
オリジナルとの比較抜きで単体としても、どうも鈍重に感じてしまうが、そこはしっかりと人体破壊描写が補えてるあたりがこの映画の強みだろう。
奇形人間とのvsヴィラン構図を打ち立てることで、単なる悪魔のいけにえフォロワーから脱却し、アジャ監督流の一風変わったホラーを構築できている。

『ヒルズハブアイズ』はオリジナル、リメイク共に似て非なる魅力が紡がれた、一粒で二度おいしい恐怖を味わえるでしょう。
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