あまね

劇場版 SPEC 天のあまねのレビュー・感想・評価

劇場版 SPEC 天(2012年製作の映画)
2.4
テレビドラマ『SPEC』の続編となる劇場版第一作。
人に非ざる特殊能力を持った《スペックホルダー》と呼ばれる超能力者達。彼らが引き起こす事件を追う、警視庁公安部公安第五課・未詳事件特別対策係――通称・未詳所属の刑事達の物語だ。

刑事ドラマと超能力ファンタジーの融合だが、内容は刑事ドラマに重きを置いている印象。
物語の時系列は『ドラマ→テレビスペシャル《翔》→劇場版《天》』となるので、前二つを見ていないと話についてこられない。

今作のストーリーは、日本の国家権力とスペックホルダーとの全面対決。
それまでは単発で事件を起こしては公安に処分されていたり、誰かに雇われていたりしたスペックホルダー達だが、ここに来て組織化し、権力の中枢を乗っ取ろうと企み始める。
前作までの敵ニノマエが今回でも敵となって立ちはだかり、日本を、人間の未来を守る壮絶な戦いが始まる――

んだけど。
正直、ドラマほどワクワクしなかった。
ひとことで言えば、冗長で散漫な印象。
詰め込まれた情報は多いが、このシリーズの特徴の一つとして、全部の謎解きをしようとはしていない。
ドラマでは明かされる謎と明かされない謎、明かし方などのバランスが良く、不思議な良い後味だったが、今回に限って言えば、謎や疑問を散漫に投げっぱなしで苛立つだけだった。

それから、妙にはしゃいだ仕上がりになっているのが気になった。
もともとこの作品はとても癖のある映像や演出で、真面目な場面にシュールな笑いを差し挟んだり、漫画のような誇張した表現を用いて独特の世界を作っている。
それが、本作では過剰に目につくのだ。
この監督のこうした映像や演出は好きだが、それでも今回はやり過ぎな気がした。
特に主人公の瀬文に対してはいじり過ぎで、時にキャラが違ってるんじゃないかと感じるくらいだった。
主要人物の日本語をおかしくし、緊迫した場面でダジャレみたいなセリフ回しになっているのも残念。
今までの作品で感じられていたおふざけとシリアスの境界がなくなり、メリハリがなくぐだぐだしていた気がする。
たまに見かける、劇場版だから色々盛っちゃった作品……のような印象だ。

要素を色々詰め込んでいるものの、謎解きの緊張感も笑いとシリアスのメリハリも、ドラマ版には及ばない。
また今回は、だいぶファンタジー寄りになっている。
純粋な刑事ものではないけれど、刑事要素が多かった今までの作品と比較すると、スペックホルダーの能力も、設定も、非現実感が一段と増している。
とりあえず、タコはやり過ぎ。
あまね

あまね