JunichiOoya

こわれゆく女のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

こわれゆく女(1974年製作の映画)
5.0
関西では少し前にアップリンク京都で懐古上映が企画されたカサヴェテス。あの組織で起こった出来事に未だに納得がいかず、浅井さんの映画館に行くことができないでいる私にとって、年末の十三第七芸術劇場とシアターセブンの特集上映は本当にありがたかった。

カサヴェテスが妻ジーナ・ローランズと実母、そして盟友ピーター・フォークを演者に、自宅を舞台にして撮った自主映画。陳腐な言い方で情けないが、命を張った、まさに渾身の表現の連続。

限られた登場人物による愛情、そしてそれと表裏を成す怒りや悲しみを捉える脚本は、どうかすると演劇素材なんだけど、クローズアップと引の固定カメラの使い分けでなんとも映画らしい仕上がりに。

壊れていくのは女だけじゃなく、男も子どもも周囲も皆んな同じ。そのことは互いに十分すぎるほど分かっていて、分かっていながら食い止めることはできない。

その焦燥と、でも代替の効かない相方との暮らし(彼らには、関係の解消なんて選択肢は微塵も思い浮かばない)への想いが怒涛のように伝わってくる。

見ている者はやたら辛いのだけれど、でも同時に強烈な愛おしさも感じてしまう。
カサヴェテスに影響を受けたと仰る、濱口竜介さんの『親密さ』をもう一度見たくなった。
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