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こわれゆく女のatsukiのレビュー・感想・評価

こわれゆく女(1974年製作の映画)
5.0
ミシェル・フーコーの言うように、精神病者という概念が生まれたのは精神病院ができたからだと思う。中世では、いわゆるフールな人を差別せず、区別せず、むしろ神のあたえた一種の贈り物として迎えられたそう。精神病院ができたから精神病者は”こうあるべきだ”、というようなことになった。原題を見れば「Under the Influence of A Woman」ではなく「A Woman Under the Influence」であるからメイベルは影響を与えてるのではなく、受けている方ではないか。つまり、「こわれゆく」原因は生活環境でしかない。あのような生活環境ができたからメイベルの生活はこわれていった。メイベルをフールだと決めつける奴らこそ、フールな選択を強いてる。そもそも夫婦って何さ。親子って何さ。家族って何さ。なぜこうであるべきだ、と言われなければいけないのか。布団で寝る、それだけで良いじゃないか。それだけで夫婦であり、親子であり、家族じゃないか。バタイユも「心のむなしさがどこまでも広がる大洋のなかで、鍵のかけられた寝室はどれも小島になって、生の表情に活気を取り戻させている」と言うし、パーティの後片付けをして、今日までのことは忘れて、さっさと寝よう。明日も忙しいから…。
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