いの

こわれゆく女のいののレビュー・感想・評価

こわれゆく女(1974年製作の映画)
4.3


正気を保ったまま狂いたい。それは、時々私が思うことだ。正気を保ったまま狂いたい、そしてできればあちら側に行ったきりにならず、なんとかこちら側に戻ってきたい。そう思ってる。正気と狂気の境目なんてほとんどなくて、自分でもどちらの側にいるのかなんて確信は持てなくて、ただなんとなくそう思うだけなのかもしれない。正気と狂気のあいだを揺れ動きながら、なんとか今日いちにちを生きている。


メイベル(ジーナ・ローランズ)は、5本の指を大きく広げて、私には大事なものが5つあると言う。大事にしたいその5つを大切にしていくことは、本当に大変なことだ。至難の業だ。大事にしたいが故に、不安になりどんどん不安になり混乱してしまう。誰かの怒鳴り声に追い込まれてしまう。誰かが不安そうに見つめてくるその視線に、追い込まれてしまう。大丈夫? その言葉にも追い込まれる。追い込まれて、あちら側へと誘われてしまう。そんな時、子どもたちの愛が呼び戻す。愛に理由なんてない。わかんないけど愛してる。この言葉は何よりも、信じるに値する。


メイベルへの愛を、片時も疑うことのないニック(ピーター・フォーク)の愛の深さ。愛していることには全く迷いがない。ニックもきっと、よくわかんないけど愛しているんだと思う。その自分の感覚を信じて疑わないところがステキすぎる。


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濱口監督から、ジョン・カサヴェテス監督へ。出会える幸せをかみしめる。