りっく

リバティ・バランスを射った男のりっくのレビュー・感想・評価

4.3
ジェームズスチュアート演じるランスは無法がまかり通る西部の現状に憤慨、変えるべきだといきり立つ。ジョンウェイン演じる保安官トムはくぎを刺す。西部で諍いを解決するのは銃だ。インテリのランスには土台無理な話だと。

ランスは無法無学の町が準州から州に昇格できるように一肌脱ぐ。そのための代表を決める選挙にはランスとリーマーヴィン演じるバランスが出馬。敗れたバランスは怒り狂い、決闘を言い残してその場を去る。さが、銃の扱いも知らぬランスがバランスを射殺。上院に上り詰めて無法の一掃に成功する。

だが、真実は違う。友情を全うするためにトムが助けたのだ。メディアが伝える伝説と真実の差。フォードは未来を担う英雄ランスの伝説の前に消えゆく過去の英雄トムの真実を浮かび上がらせ、そこに映画の魂を込める。

トムはハリーを愛し、家を新築して、結婚を願っていた。だが事件を機に彼女の心はランスへと傾く。荒れた彼は自らの家に火を放つことで思いを断ち切り、ランスに真実を告げて未来へと託すと、西武物語の表舞台から身を引く。その深い屈折に彩られたもの悲しさが身に染みる。
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