えいがうるふ

英国王のスピーチのえいがうるふのレビュー・感想・評価

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)
4.1
映画にするためにあるような元ネタのドラマ性が強いうえ、コリン・ファースとヘレナ・ボナム=カーター、大好きな演技派二人の持ち味が存分に生かされていた。もちろん、言語聴覚士ライオネルを演じたジェフリー・ラッシュも素晴らしいキャスティングで、これで名作にならないわけがない。
とても興味深い話なので、可能ならドキュメンタリー作品も観て史実を確かめてみたいと思った。

余談だが、イギリス王室ものの映画を観る度に思うこと。
日本では未だに御簾の奥のやんごとなき人々についてそのプライバシーに踏み込むのはタブーとされ、ましてその家族史や裏事情を映画のようなエンターテイメントに仕立てるなど不敬の極みのように思われているが、それに比べて英国のロイヤルファミリーときたら、中世から現代まで、まして存命中の女王に至るまで、おそらく世界中のどこの貴族王族よりも大胆にエンタメ化されまくっている。
でも、彼らのように下世話なスキャンダルを面白おかしく誇張して描いた作品をも黙認するぐらいの懐の深さがあればこそ、この作品のように一般庶民には知り得ないそのステイタスならではの苦労や葛藤もまたリアリティをもって親身に受け入れられ、身分は違えど同じ人間として共感を得られるのではないだろうか。だからこそ、英国のみならず私のような海外の庶民にまで親近感を持たれ愛されているのだと思う。
この国に生まれ育ち約半世紀を生きてきたが、残念ながら私にとって皇室はいまだにひたすら遠い遠い存在でしかない。