yukihiro084

英国王のスピーチのyukihiro084のレビュー・感想・評価

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)
4.8
孤独。そして重圧。

子供の頃から、国王になるような
教育は一切受けてこなかった。
国王は兄のエドワードがなることは
子供の頃から決まってきた。

両親の温もりも知らずに育った。
最も親しい家族は、育ての乳母。
痛みを伴ういくつかの矯正。

自分の心の痛みや悲しみを吐露する
場面でも、上手く言葉が出てこない。
吐き出したい想いはたくさんあるのに、
その言葉さえ、どもってしまう。
もう、切ない。

この作品の素晴らしいところは、
どこか素朴な作りになっているところだ。
オープニングから、ミニシアター作品を
観ている風合いを感じる。

それは、国王ジョージ六世ではなく
人間アルバートの孤独や苦悩を
描いているからだろう。

エキセントリックな役柄が多い
ヘレナ・ボトム・カーターもいい。
夫を献身的に支え、ウィットもあり、
場面場面を柔らかい印象にしている。

ジェフリー・ラッシュ。
やっぱり上手い。
目だけで芝居をしているよう。
豊かな表情。掴み所のない
ユーモラスなキャラクター。
愛すべきキャラクターを創造している。

そして、コリン・ファース。

この物語は、吃音症も大きなテーマだが、
吃音症は物語のとっかかりに過ぎない。
ひとりの人間が、友を得て、自らの人生や
自分自身を肯定してゆく物語だ。
弱々しく、経験も自信もなく、
自分の人生を切り拓いてゆく
力強さもない。その弱さも甘さも、
コリン・ファースは見事に体現している。

日テレで真夜中にやっていた。
もう2度ほど観ているので、
無理に観なくてもよいのだが、
僕は保育園、小学校と、
行事ごとには必ず顔を出していて、
今も月一ある学校開放とやらで
息子の授業を見学している。
(本当は休日なので寝坊したいが)
なので、家の近所で会う子供たちは
ほとんど顔見知りになっている。
先日、0歳から知っている子供と
話す機会があった。久しぶりだった
その子は、僕にいろいろ話してくれる
のだが言葉がなかなか出てこなかった。
その子の言葉を待つ。
僕はどんな表情をしていただろうか。
僕の心は何かに搔きまわされ、
叫び声をあげたい衝動に駆られる。
その子と別れてから、吃音症をことを
調べたり、周りに聞いたりし始めた。

食い入るように観た。
映画って面白い。また違う景色が
ほら、広がっていた。
それは、自分の経験と映画の
追いかけっこのようだ。
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