むぅ

英国王のスピーチのむぅのレビュー・感想・評価

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)
4.2
「世界征服とか?」

新しく始める趣味の候補が、ゴルフ、キックボクシング、ボイトレの三択なのだがボイトレはどこに目標設定したらいいもんかと友人が言うので提案してみた。
「私はヒトラーか」
と返された。
こちらとしては、歌も上手けりゃプレゼンも確実に上手そうな友人の"ボイトレの目標設定"なるものに、そのくらいしか思いつかなかったのだ。
そもそも私には趣味を始めるにあたり、"目標設定する"という概念がなかった。
「えらいねぇ」
「むぅも映画楽しそうじゃん」
よくぞ、ふってくれました。映画の話をしようと口を開いたところ
「絶対ゴルフ!」
酔うと目が据わるもう1人が叫んだ。飲んでいた4人の中では"女王さまタイプ"である。もちろん陛下の目はとうの昔に据わっている。
下々の私は口をつぐむしかない。以降、ヒトラーと女王陛下のゴルフ談義が続いた。

その時したかったのは今作の話。
せっかくだから2年ぶりに鑑賞。


吃音症に悩む英国王ジョージ6世が、言語療養士ライオネルの手を借りながら国王としてのスピーチに挑んでいく。


お父様!
最近Netflixで『ザ クラウン』を観ているので、登場人物たちに親しみを感じるどころの騒ぎではない。
今作の主人公ジョージ6世は、エリザベス2世の父上。『ザ クラウン』では早々に崩御されたので、お懐かしゅうございますと謎の親しみを込めて観た。
映画をよく観るようになった頃に観た作品なので印象深く、かなり細かいところまで覚えていた事に驚くと共に、前回の鑑賞では歴史の知識が全くないまま観たので、今回の方が何倍も面白い。
『ザ クラウン』では何話分も使って描かれる事にサラッとではあるが確実に触れているし、エリザベスやマーガレット始めそれぞれのキャラクターも掴みやすく、改めて丁寧につくられた作品なんだなと思った。


伝えるというのは本当に難しい。
1:1だって大変なのにそれが1:複数、しかもそこに吃音症や国王という立場やそれらへの想いが重圧としてのしかかる。
どれほどのものだったろうか、と思う。
そしてそれを演じるコリン・ファースが素晴らしい。ついでに、かなりカッコいい。

"スピーチを成功させる物語"
重要なのはそこだけではなく、ジョージ6世とライオネルの友情や、父や短期間で退位してしまった兄、常に支えてくれる妻との関係の中で自身と向き合う姿を描く。

ボイトレから思い出した今作だったが、久しぶりに観て良かった。

ちなみに今作面白かったなぁと思いを馳せている間に、女王陛下とボイトレヒトラーのゴルフ談義はいかに自分が負けず嫌いかという議論に発展していた。
どちらが負けず嫌いかで競うという負けず嫌いっぷり。
その論点のズレ方は、ボイトレで今作を思い出した私と良い勝負。

いや、戦うなら自分自身と戦うべきだなと今作のジョージ6世から学んだ事を噛み締めた。
むぅ

むぅ