吃音症に悩むイギリス国王・ジョージ6世と言語療法士の友情と挑戦を描く。
吃音の演技は「どもり」が大袈裟になりがちだが、コリン・ファースの喋り方にはリアリティがあった。
王としての威厳、国民に声を届ける重圧、焦燥感、癇癪など、苦悩する彼の演技は素晴らしかった。
そして、言語療法士ライオネルを演じたジェフリー・ラッシュの目がとても優しかった。
大音量の音楽をヘッドホンに流した状態で朗読させたり、歌わせたり、汚い言葉を叫ばせたり、過去のトラウマを聞き出し、対等の立場で心に寄り添いながら声を引き出していく治療法に熱意を感じた。
「アルバートが王位を継ぐべきだ」と言うライオネルに腹を立て、絶交を言い渡し、王室を訪ねた彼に会おうともしないアルバート。
そんな二人の会話が印象的。
「キング、すまん」
「誰がキングスマンやねん。私こそ、すまん」
…て、そんな会話ないわ!
ライオネルに対する立腹や謝罪は、地位や身分を越えた関係だからこそあるんだと思った。疑い、信じ、背を向け、また頼る。良き友となり吃音の克服へ向かう二人。
評価の高い作品なので、クライマックスは原稿を投げ捨て心で語るスピーチを期待した。実話ベースの物語なので誇張や脚色はあまりしない方がいいが、正直言って想定内に留まる感動だった。