当時メジャースタジオ作品(A級)と同時上映された低予算の映画作品、B級映画の1つ。B級といってもA級映画に劣る、というわけではなく。低予算ゆえにいかに限られたショットの数の中で観客に物語を演出をもって伝えるか、監督の力量が試されるジャンルというわけです。
そう思うと、この『拳銃魔』は隙があまりないくらい完成度も高いし、作品としてかなり面白い!!
物語の設定からもう秀逸!!
幼少期から拳銃に魅せられているけど、殺生はしたくない青年、バードと、その拳銃の腕で自らの生計を立ててきた美女、ローリーのボーイ・ミーツ・ガール。
拳銃というアイテムをもって2人は出会うべくして出会い、またこの拳銃というアイテムゆえに不穏な展開を予想してゆく。
サーカスの催しで銃の腕試しをローリーとすることなるバード。
拳銃を両手にばんばんっと天井に打ちながら登場するローリー。
カットはバードの目線ゆえのローアングルから、つまり私たちはローリーに見下ろされる。そこに銃口を画面に向けるショット。
ああ、バードはもうこの時点で彼女に掴まれてしまったな、と笑
サーカスをクビになり、やがて生計のために拳銃の腕を用い、強盗を働くようになる。
ボニー&クライドものになっていくの、2人の結末は観客はわかってる、ゆえにこの結末を迎えるまでの逃避行が残像のように、儚いものとして感じる。
ボニー&クライドものとして面白いのは、ローリーのキャラクターが物語にかなり面白さを加えていて。殺生をしたくないバードに対し、ローリーは「お金のある生活をしたいの。貧乏暮らしは嫌。これまで見下してきた人たちを見返すのよ」って端的にばっさり。
このローリー、成り上がり根性、というかしたたかさを持っていて、自覚的に自らの魅力を使っているんだよね。
車を奪うためにおじさんにハニー・トラップ仕掛けるし、バードにも共犯関係を結ばせる。
ローリーにとってファッションは自らをフィクション化させるツール。本当の彼女は?みたいなくらいコロコロ雰囲気を変えて観客を誘惑する。
映画の中で同性が見ても、異性が見ても、快感を覚えるような女性像がここには仕込まれていて、このある種の毒っぽさが作品を面白くしてる!
ショット同士の偶然的な連なりも重要な気が。どんなに監督が構想を練り上げても、撮影は予想外のハプニングや奇跡が起こりがち。撮影自体は生ものだし。
バードとローリーが給料強盗して、逃げてるときとか、何回かつまづいたり、バック落としたりするんだけど、このどこまでが演技でどこまでが偶然なの!?みたいなショット、車の運転シーンとかも、映画の制作過程が浮かび上がるような連なりが、観客に与える衝撃や感動に繋がってる気がしてならない。
そしてバードの銃で殺生したくない(だからラストまで実質人を殺めてない)設定が、ローリーとの結末にぴたっとハマったときは、この脚本と演出、天才か!と思わずつっこみました笑