佐藤でした

エデンの東の佐藤でしたのレビュー・感想・評価

エデンの東(1954年製作の映画)
4.0
1917年、カリフォルニア州サリナス。トラスク家の次男ケイレブ(愛称キャル)は、兄アーロンが秀才で心優しい性格から父に可愛がられる一方、気むずかしく反抗的で父から疎まれていた。アーロンの美しい婚約者エイブラはそんなキャルが気がかりだった。
ある日、キャルは父から死んだと聞かされていた母がまだ生きていることを知る。そしてそれが、どうやら近くで酒場を経営する女性らしいと知り、訪ねていくのだった…。


50年代とか、名作と呼ばれるクラシカルな作品って、教養として見ておくべき“たしなみ”でとりあえず観る場合がある。娯楽というより勉強に近い感覚。
今作と同じ1954年製作のものに限って見ても黒澤監督の「七人の侍」やフェリーニの「道」があるけど、最初に見るきっかけはどれもそうだった。

でもこれは何にも強いられることなく、すんなりと難しい年齢の時期にいる青年の心に寄り添える古い映画だった。デジタルリマスター版の力も大いに手伝っている。

次男坊の、というか2番目として生まれてきた人間の複雑な胸中を、ジェームズ・ディーンが見事な機微で表現していた。

先に生まれてきたってだけの長男が“基準”として既に設けられていて、兄のように上手く出来なければ「どうして出来ない?」と問われる不思議。
まるで正解と不正解のようだが、個性と捉えられるべき事柄だ。

仮にもしそれが不正解というなら、兄のアーロンだって不正解かもしれない。父親の言うことを鵜呑みにし、母親がいない現実もすんなりと受け入れ、なんの摩擦もなく暮らすお利口さん。どこか無理をしている節も見受けられる。

一方キャルは、一見子供みたいだが、わからないことをわからないままにせず、一つの疑念について考え悩み、真っ直ぐに相手に尋ねることができる。
それにとても愛情深き人間で、理解し合えないけど人一倍父親に認めてもらいたいと願っている。

だからこそ、渾身の力で「大嫌いだ」と言わなければいけない場面は、こちらまで悔しくなって泣けてくる。心に留めておきたい名シーンだった。
佐藤でした

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