三樹夫

エグザイル/絆の三樹夫のレビュー・感想・評価

エグザイル/絆(2006年製作の映画)
3.7
グラサン、ロングコート、煙草、拳銃と中学生が考えるような男のかっこいいアイテムがぶち込まれています。男たちの挽歌シリーズでもチョウ・ユンファがグラサンかけてハーモニカふいてたりクラリネットを演奏するオープニングで映画が始まる作品があるわけですが、香港映画はかっこよさの足し算のみで作られていることがままあります。これを邦画でやった場合にはギャグにしか出来ないでしょうが、香港映画の場合思わずツッコミを入れたくなるものの、かっこいいとして成立しているわけです。
ギャグにしか出来ないのとかっこいいとしてちゃんと成立しているの分かれ目は照れにあります。ジョニー・トーはこれらのいかにもというかっこいいアイテムを心からかっこいいと思っています。そこに照れなんて一切ありません。もし照れがあればパロディ的なギャグにするしかないわけです。これは日本の漫画でも同じみたいです。例えば梶原一騎的漫画を描きたいなら照れる漫画家には描けません。そして昔は照れてしまう漫画家は編集者から照れるなと言われたそうです。ですが読者もいろんな漫画を読んで照れるようになったから、照れる漫画家も照れるようなことを意識的に押し込めて描かなくてもよくなったそうです。作品の照れは確実に伝わるということです。

僕はかなり照れるタイプなんですが、それでも時には照れのない直球的な作品を観たくなります。照れる人に照れてない作品を作るのは無理なわけで、そうなるとかっこよさの足し算を観るなら香港映画なわけです。足し算ってことは数値は高いわけですからね、楽しいです。
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