りっく

軽蔑のりっくのレビュー・感想・評価

軽蔑(2011年製作の映画)
2.0
https://www.shimacinema.com/2021/04/19/keibetu/

本作は男と女の逃避行である。その行動は理屈ではなく、感情的なものだ。そんな感情や衝動を重視する作品は、観客を登場人物に感情移入させないと、どうしても画面上の人物と客席の間に溝が生じてしまう。だからこそ、魅力的な人物描写が重要になってくる。

鈴木杏が演じるヒロインのポールダンサーには違和感がある。それだけ鈴木杏という女優とポールダンサーという役柄がマッチしていない。ただし、その「ミスマッチ感」は本作に限って言えばプラスに働いていると思う。豊満な肉体を持つ多国籍ダンサーに囲まれた彼女の場違いな感じは、そのままダンサーの世界は彼女の居場所ではないことを暗示しているように思える。だからこそ、新宿から脱出すると同時に、濃いメイクを落とし普段の鈴木杏の姿になる時、脱出先の土地との「しっくり感」に説得力が生じる。

だが、彼女は田舎の閉鎖性を際立たせる第三者の役割を果たすに過ぎない。脱出しても、彼への愛があっても、自分の居場所がないという虚無感。彼女の哀しみが観る側に伝わってくるからこそ、1度目の田舎町の場面は見事である。

しかし、映画後半に再び田舎町へ行ってから、本作はどんどん魅力を失っていく。その最大の要因は高良健吾が演じるチンピラにある。この本当にしょうもないキャラクターの好き嫌いが、本作の評価に直結するのではないだろうか。口と格好だけは一流ではあるが、所詮いい家のボンボンであり、妻のヒモになることに何の抵抗もない甘ったれ野郎だ。

そんな周囲の甘やかしが前面に出てくる後半の展開に全く魅力を感じない。しかも、終わりそうで終わらない、終われそうで終わらせない冗長でくどい演出が、空間に漂う緊迫感を弛緩させていく。主人公のチンピラに人間的な「ほっとけなさ」のような魅力を感じないからこそ、ヒロインの彼への一途な愛情も腑に落ちてこないのだ。
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