rpmu90377

心中天網島のrpmu90377のレビュー・感想・評価

心中天網島(1969年製作の映画)
3.5
大阪天満の紙屋治兵衛は女房子供のある身ながら、曽根崎新地の遊女・紀伊国屋の小春のもとに通い詰め、深い中になっていた。治兵衛の放蕩ぶりを見かねた兄の孫右衛門は侍に扮して小春の客となる。そこで小春は「治兵衛と心中する約束をしているのだが、本当は死にたくない。だから自分の元に通い続けて治兵衛を諦めさせて欲しい。」と頼む。それを盗み聞きした治兵衛は激怒し、小春に罵声を浴びせかけて彼女のもとを去る。しかし、実は小春は、治兵衛の妻・おさんから切実な思いを訴える手紙を受け取り、心にもない愛想尽かしをしたのだった。。。

男の妻から手紙をもらい迷惑をかけて申し訳ないと、心にもない言葉を吐いて男を妻のもとへ帰す遊女。その遊女が別の客に見受けされそうになり死ぬ覚悟でいることを見抜いて、夫に見受けしてくるように諭す妻。双方が「女の義理がたちまへん」とお互いを思いやるストーリーは美談ではあるが、近松門左衛門が生きた時代には通用しても、現代の感覚ではなかなか理解しがたい。
しかし、治兵衛と小春が「義理」という世間の厳しいルールにあがなうことはできず、心中という道しか選択することができないという流れは、300年後の今でも十分に理解できる。今も昔も不倫に向けられる世間の目は厳しい。

文字が書かれた床や抽象画が描かれた壁で囲まれた空間で、俳優たちが黒子にアシストされながら熱演を繰り広げる。映画と舞台が融合したようなモノクロ映像はユニークで面白い。

中村吉右衛門、岩下志麻など実力派をそろえた布陣ではあるが、物足りなく感じたのは彼らの話すセリフが大阪の言葉になっていないこと。近松の世界観を出すうえで、大阪の古い言葉を再現することは必要最低限の条件だ。方言指導に手を抜いてほしくなかった。
rpmu90377

rpmu90377