松原慶太

心中天網島の松原慶太のレビュー・感想・評価

心中天網島(1969年製作の映画)
4.1
いやあ、いいもん見させてもらいましたわ。近松門左衛門の心中ものを、篠田正浩監督がモノクロで撮りきった傑作。これぞATGならではの尖ったアート作品です。

舞台美術は粟津潔(たぶんタイトルバックのタイポグラフィも)、音楽は武満徹。

演じているのは生身の人間(岩下志麻、中村吉右衛門)なのですが、原作が人情浄瑠璃なので、画面の端々に「黒子」が登場し進行をサポート。ときおり、俳優たちがまるで人形のように見える瞬間があります。このアイデアは素晴らしい。篠田正浩の最高傑作じゃないかなあ。

心中ものとはいえ、たんなる純愛ではなく、女の狡さも、男のだらしなさも描き、ふたりが世間の義理に縛られて、だんだんと追い詰められていく姿には感情移入できます。

ただ正直言いますと、惚れた腫れたの死ぬだの殺すだのをえんえんと見せられ、しまいにはお腹いっぱいになる感じは否めませんでしたが...w

しかし岩下志麻の死体は、しみじみと美しいなあ。