心中天網島の作品情報・感想・評価

「心中天網島」に投稿された感想・評価

いやあ、いいもん見させてもらいましたわ。近松門左衛門の心中ものを、篠田正浩監督がモノクロで撮りきった傑作。これぞATGならではの尖ったアート作品です。

舞台美術は粟津潔(たぶんタイトルバックのタイポグラフィも)、音楽は武満徹。

演じているのは生身の人間(岩下志麻、中村吉右衛門)なのですが、原作が人情浄瑠璃なので、画面の端々に「黒子」が登場し進行をサポート。ときおり、俳優たちがまるで人形のように見える瞬間があります。このアイデアは素晴らしい。篠田正浩の最高傑作じゃないかなあ。

心中ものとはいえ、たんなる純愛ではなく、女の狡さも、男のだらしなさも描き、ふたりが世間の義理に縛られて、だんだんと追い詰められていく姿には感情移入できます。

ただ正直言いますと、惚れた腫れたの死ぬだの殺すだのをえんえんと見せられ、しまいにはお腹いっぱいになる感じは否めませんでしたが...w

しかし岩下志麻の死体は、しみじみと美しいなあ。
黒子の存在が面白い。黒子なのにガンガン目立ってくる彼らの立ち回りに最初は面食らうものの、最終的に妙な愛着が湧いてきた。画面に映っていないと逆に不安になるという現象が…。粟津潔のコテコテの舞台セットの上で動く人形のような岩下志麻を見せてくれるのがATG、武満徹の音楽もありがとうございます。

小松方正暴れてたなー。墓場でのセックスシーンより強烈だったかもしれない。
映像と岩下志麻が素晴らしいだけに、冒頭のメタ演出が陳腐でクサイ。
ATG映画特有の無駄なかっこつけ。

心中シーンで黒子がうろつくのも照れ隠しに見えちゃう。
粟津潔の美術と黒子の演出は一見に値するけどそれ以外がタルい、途中で断念。
人形浄瑠璃を実写でやろうとする試みとして、黒子が効果的に登場したり三味線が流れたりする前衛的な演出は楽しい。女郎の小春に恋をした紙屋の治兵衛(ちへい)と妻のおさんを含めた三人の話。小春の女郎っぽくない守りたくなるいじらしさと対照的な情に厚い妻のおさん。中盤は、弱冠尺延ばしの感があった。終盤の墓場から河原の藪の中にかけてのシーンで、画面に治兵衛と小春と黒子の三人だけのショットが最も映画的だと感じた。河原を登った先に黒子が立ち並ぶ光景は、イングマール・ベルイマンの「第七の封印」を連想した。
郁世

郁世の感想・評価

4.5
衝撃的でクール過ぎる…。
近松門左衛門原作で、元は人形浄瑠璃で披露されてたこの作品。

いや〜、魅せ方が本当カッコよすぎる。黒子が効いてる!!!
天井桟敷の方達ありきの映画でもあるし、二役演じた岩下志麻が痺れるほどカッコいい笑

オープニングの篠田監督と脚本の富岡さんとの会話がこれから始まるんだなっていう、ドキドキ感を与えるし、舞台では当たり前になってしまうこの作品をわざわざ映画として表現しようとした俯瞰的感覚が素敵すぎます!!!
抽象的なセットの中で繰り広げられる男と女の情愛。浮世絵が背景に配され黒子がひしめく様は、ATG作品とはいえ斬新。

紙屋治兵衛(中村吉右衛門)が入れ込む女郎・小春と本妻・おさんは岩下志麻の1人2役。メイクと演技でここまで違う人物になれるのかと衝撃。顔が似てるという設定は別にないのに、何故1人2役なのか?

治兵衛と小春を見つめる黒子の頭(浜村純)の冷たい目が印象的。
ご存知近松作品を富岡多恵子らが脚色し、篠田正浩か女房と吉右衛門を使って撮った一作。セット、演出、配役など「これでもか!」ていう気合いの入れ方。吉右衛門のサラブレッド感が半端ない。上方世話ものの女は芯が強い貞女。黒子使いも鮮やか。グリーナウェイと通ずる。というか『枕草子』でパクってる。
櫻

櫻の感想・評価

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願うだけでは物足りず、叶わないという事実にこの身を焦がす。一緒にいられんのなら、いっそのことあの世へでも、地獄でもなんでもいいから連れていって。かなしいは愛しい。でも、この想いが叶って仕舞えば、あの人との約束を破ってしまうことになる。嘘の世界で生きる女、何を演技の一つくらい。それであの人の大切なこの人の命が助かるのなら。

女同士の義理。想い人の女房からの頼みを立て、自分の想いを心にしまい込む。最後まで、その義理への後ろめたさに声をあげていた彼女。私は心中そのものよりも、この女ふたりの義理人情(友情に近い)に心を持っていかれた。こんなに私は何もかもを放れない。

頭と足を向けあい、死顔を並べて横たわるふたり。あの世で会える保証もない、この世で一緒になるのはもっと叶わない。この人を生かしておくことが約束だったけれど、この想いを留めておける自信はなかった。かなしいほどに切実で、嘘みたいに真実を貫いたふたりが、だんだんと闇に消えていくまで終始ぎゅっと心を掴まれた。
lag

lagの感想・評価

3.9
人形浄瑠璃や歌舞伎の演出を映画に持ち込んだ前衛作品。ひとえに、情。信じる。やっぱりこの世は残酷だ。曽根崎は大阪。
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