心中天網島の作品情報・感想・評価

「心中天網島」に投稿された感想・評価

いやあ、いいもん見させてもらいましたわ。近松門左衛門の心中ものを、篠田正浩監督がモノクロで撮りきった傑作。これぞATGならではの尖ったアート作品です。

舞台美術は粟津潔(たぶんタイトルバックのタイポグラフィも)、音楽は武満徹。

演じているのは生身の人間(岩下志麻、中村吉右衛門)なのですが、原作が人情浄瑠璃なので、画面の端々に「黒子」が登場し進行をサポート。ときおり、俳優たちがまるで人形のように見える瞬間があります。このアイデアは素晴らしい。篠田正浩の最高傑作じゃないかなあ。

心中ものとはいえ、たんなる純愛ではなく、女の狡さも、男のだらしなさも描き、ふたりが世間の義理に縛られて、だんだんと追い詰められていく姿には感情移入できます。

ただ正直言いますと、惚れた腫れたの死ぬだの殺すだのをえんえんと見せられ、しまいにはお腹いっぱいになる感じは否めませんでしたが...w

しかし岩下志麻の死体は、しみじみと美しいなあ。
ご存知近松作品を富岡多恵子らが脚色し、篠田正浩か女房と吉右衛門を使って撮った一作。セット、演出、配役など「これでもか!」ていう気合いの入れ方。吉右衛門のサラブレッド感が半端ない。上方世話ものの女は芯が強い貞女。黒子使いも鮮やか。グリーナウェイと通ずる。というか『枕草子』でパクってる。
櫻

櫻の感想・評価

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願うだけでは物足りず、叶わないという事実にこの身を焦がす。一緒にいられんのなら、いっそのことあの世へでも、地獄でもなんでもいいから連れていって。かなしいは愛しい。でも、この想いが叶って仕舞えば、あの人との約束を破ってしまうことになる。嘘の世界で生きる女、何を演技の一つくらい。それであの人の大切なこの人の命が助かるのなら。

女同士の義理。想い人の女房からの頼みを立て、自分の想いを心にしまい込む。最後まで、その義理への後ろめたさに声をあげていた彼女。私は心中そのものよりも、この女ふたりの義理人情(友情に近い)に心を持っていかれた。こんなに私は何もかもを放れない。

頭と足を向けあい、死顔を並べて横たわるふたり。あの世で会える保証もない、この世で一緒になるのはもっと叶わない。この人を生かしておくことが約束だったけれど、この想いを留めておける自信はなかった。かなしいほどに切実で、嘘みたいに真実を貫いたふたりが、だんだんと闇に消えていくまで終始ぎゅっと心を掴まれた。
lag

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3.9
人形浄瑠璃や歌舞伎の演出を映画に持ち込んだ前衛作品。偏(ひとえ)に、情。信じる。やっぱりこの世は残酷だ。曽根崎は大阪。
じゅんP

じゅんPの感想・評価

4.2
心中物って要はゴシップなわけで、そんな世俗的なトピックを繊細に艶やかに伝え切った上、安易な共感を拒む至高の職人仕事。

作為を飲み込み、矛盾を物ともせず、それでいて庶民を笑かす表現の到達点の鋭さに圧倒される。
scarface

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3.8
すごいすごい。こんな時代劇観たことない。素晴らしい心中もの。ATGだから、篠田さんだから、こうなったのか。これがNETFLIXでちょちょいと観れてしまう時代というのが恐ろしい。いや素晴らしいことか。ネトフリは結構ATG観れますね。
Yoko

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4.0
享保5 (1720) 年、近松門左衛門が手掛けた浄瑠璃の映画化。
妻子を持つ身である”紙屋治兵衛”と女郎”小春”の壮絶な愛。

今作が公開された1969年は『男はつらいよ』の第一作目が完成されたころでもあり、映画をカラーで作ろうと思えば作れる時代。
まあ技術的にはカラーで出来るものの、時代背景との調和や作り手の狙いによって白黒映画になる作品はアザナヴィシウス『アーティスト』然り、そう珍しいものではない。
しかし、今作は白黒でしか出せない不気味さと奇天烈さ、これらが何よりも刺激的。
まさか浄瑠璃を原作にした実験映画があったとは思ってもみなかった。
「映画を観た」というよりも「人形劇を観劇した」といった感慨があるが、でもやはり「映画を観た」という気分も半々で謎の消化不良にさいなまれる。
おそらく綿密に計画されたであろう移動を心掛ける黒子。
床や壁にびっしりと書かれた呪詛を思わせる文字。
そして提灯の蝋燭を消した瞬間に訪れる魔法の時間。
女郎という身でありながら妻子を持つ男なった女と、健気に夫の身を案じるいたいけな妻の二役を演じる岩下志麻は凄い!
色とりどりの環境の中にある白粉と比べて、白黒映画の白粉はそれが持つ魅力が損なわれる先入観があったのだがなんてことはない。
この現象は新発見。
まさにお化けのような映画だった。
近松門左衛門原作の心中物語を中村吉右衛門、岩下志麻の主演で映画化、監督は篠田正浩

3度目の鑑賞、先日曽根崎心中を見て気になってまた見たくなった、2回目は一年ちょっと前だと思うけど案外覚えてないもんですね、新たな発見、おどろき、感動がありました、いい映画は何度見てもいい、見るたびに評価が上がるみたいな、そんなものを味わいました

映画と舞台を合わせたような演出、至る所で黒子が出てきたり、劇中のセットにしても独特の世界観を持つ、これがすごいセンスがいいんです!なんか日本の美って感じ!

出演者もみんなすごく良い!主演の2人は言うことなし、滝田祐介、小松方正なんかもすごく印象的だし

あとは曽根崎心中とすごい似ていたから調べてみたんだけど、元ネタは違う事件みたいね、ただ両方見たあとだとなんか比べちゃうところがありますね
なんだろう、この作品はここまで舞台風に、演出過剰にしていながら自然なんです、演者はあくまで自然に物語を演じていながら、作り手による雰囲気作りみたいな、なんかうまく言えないけどそんな感じ!そしてそれがモノクロ作品で日本の古典芸能である歌舞伎的な演出だからマッチしてるのかなぁ

とにかくほぼ満点に近く面白かった!
様々な思いが込み上げてきて、もうどろどろによろよろにボロッボロにならながら死地に向かう2人の姿が一番印象的です、そんな姿でもなんか美しいんだよね
並木座で鑑賞。(2本立て)

黒子を使った演出や、モノクロ映像が印象的ではあったが、前衛的すぎるこうした作品はあまり好みではない。(でも、観に行ってしまうのだが…)

岩下志麻の美しさが、この作品の支えであると感じた。本当に美しい。
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