アフリカの実状
を知って欲しい…。
ブラックアフリカン
でもあるアントワン
フークアの初期作…
ブルース・ウィリス、
モニカ・ベルッチ主演
「ティアーズ・オブ・ザ・サン」
ダイ・ハード4として作成されたプロットがそのハード過ぎる内容と社会性により単独作として作成された戦争アクション映画。マグニフィセント・セブンのアントワン・フークア監督作。
ナイジェリアで内戦が勃発。イスラム系フラニ族率いる反政府軍がキリスト教系イボ族の政府軍を打倒すべく戦闘が開始される。各国の大使、外国人居留者を救うべく、ナイジェリア沖に展開した米空母ハリー・S・トルーマンよりSEALsの部隊が出撃していた。その中ウォーターズ大尉(ブルース・ウィリス)のチームはアメリカ国籍の医師ケンドリック(モニカ・ベルッチ)を救いに難民センターに向かう。たがケンドリック、神父らを救うだけの作戦は彼女の強い意思と実情を知った大尉により多くの難民を救う作戦へと変更する。隣国カメルーンへの道のりは遠く、部隊は窮地に陥り…。
ブラックであるアントワン・フークアがそのルーツであるアフリカの実状をしって欲しいと語る作品だけに、中々に重いストーリー。戦争アクションとしての皮を被っていますが、その骨の部分が表現を含め重いんですよね。
あくまでフィクションとして作られておりますが、ナイジェリアという国、アフリカという場所を基に描かれています。そもそもアフリカの国境線は民族ごとに分けられてはいません。第二次世界大戦前の西欧諸国による植民地により分けられています。そのため、細かく別れた部族制が残るアフリカではその部族、民族間の争いが残っています。そこに西欧が残したキリスト教と西アジアから伸びるイスラム教と言う宗教間対立が組み込まれ、更に石油など資源による利権争いも拍車をかけています。
このバックボーンから当時ナイジェリアに起こった急進的ムスリム同胞団であるボコ・ハラムの存在を反政府軍にあてはめています。民族浄化を旗頭にしている故に残虐非道。前半からその女性にも容赦ない悪逆非道の姿が描かれています。かなりエグく…。
その背景から、実状を知り始め、助けようと心変わりして行くSEALsの面々。白人であるブルース・ウィリスの台詞の中に罪滅ぼしだと言うものがあり、背景をまた感じさせられます。
ただ、それを訴えるための皮であるアクションもアントワンの十八番であり、迫力はかなりのモノ。ラストアクションは後のマグニフィセント・セブンを思わせる壮絶な脱出戦。大部隊を相手にわずか数名のSEALsが民間人を守りながら決死の戦いを展開。ヤマト愛の戦士たちを思わせる(T_T)展開に熱くなります。爆発も大迫力です。
ただ各キャラクターのかき分け、掘り下げ、心理変化の描写が弱めなのが、玉に瑕でしょうか。人を助けたいと言う思いに理屈はいらないかも知れませんし、怒りは充分描かれています。
ブルース・ウィリスは比較的無口かつプロ軍人と言う役は珍しいのかも知れませんね。正義、友愛に目覚める指揮官役ですが、中々難しかったと…(T_T) モニカもその特性を活かしたとはやや言い難いですから、その点は何か惜しい感じかな…。
アメリカ国防総省がバックアップしている作品ですのでアメリカ万歳のアクションと言う側面ももちろんありますし、それを隠れ蓑に、あってはならない、民族浄化、虐殺が描かれています。確かにアメリカ視線かも知れませんが、それだけはあってはならないはずですからね。
ただ…その人の尊厳を守る国であるアメリカがおかしくなっているのも作品から20年近くたった今では事実なんですよね…(T_T) 世界の警察から降りようとしていますから…今では大作では作りにくいかも知れませんね。