たりほssk

パリ空港の人々のたりほsskのレビュー・感想・評価

パリ空港の人々(1993年製作の映画)
4.3
原題は Tombés du ciel で「空から落ちた人々」🛩
トランジットとは、「一時寄港」を意味する。審査を受けて出国し、次の国に審査を受けて入国するまでがトランジットゾーン。(だから飛行機の中も含まれる)言わば無国籍地帯である。出国・入国するためには、自分の身分を証明するもの、すなわちパスポートがなければならない。

図像学者アルチュロは、パスポートを盗まれたために身分証明ができずフランスに入国することができなくなってしまう。年末のため確認がなかなか取れず、空港内で過ごすはめになる。しかしそこには様々な理由で空港に足留めされたままの人々が(住んで)いた……彼らは奇妙な共同生活を営み、そこには一定の秩序と落ち着きさえあった。最初は一刻も早くこの状況から逃れたいと思っていたアルチュロだが、彼らと話していくうちに心を通わせるようになっていく。

この空港内に住む人々がとても不思議。中にはすでに死語とされている言語を話すエチオピアの男がいたりする。そして彼らはもはや自分の状況を変えることはあきらめているようで、だからなのか彼らはおとぎ話の世界に住んでいるようにも見えた。
とはいえ大晦日のパリで望郷の思いにかられる彼らには胸が詰まった。

ジャン・ロシュフォールが味わい深くてすごく良かった。すてきだった。

自分の存在証明とは何だろう?国籍とは何だろう?
最後にゾラが一歩を踏み出したことで他の住人にも影響があるだろうか?
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