とらキチ

ラ・スクムーンのとらキチのレビュー・感想・評価

ラ・スクムーン(1972年製作の映画)
3.3
ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3 ⑤
ジョゼ・ジョヴァンニが、若い時ペルピニヤン・サンテ監獄で知り合った実在の一匹狼“死神”をモデルに書き下した原作小説を自ら脚色し監督した作品。
なんと、自らの原作を元に作られた1961年の作品「勝負(かた)をつけろ」を今度は原作者自身が脚本、監督を担当して撮った作品。しかも主演も同じくジャン=ポール・ベルモンドが務めている。「勝負(かた)をつけろ」から11年、ベルモンドは当時39歳。
というわけで同じ日に「勝負(かた)をつけろ」から続けて今作を観ることが出来たので、見比べた感想を。
今作でのベルモンドは渋みが増し、もうアクション俳優として完全に確立されていた頃なので、「勝負(かた)をつけろ」よりもわかりやすいアクションシーンが多かった印象。早撃ちのシーンも「勝負(かた)をつけろ」では実はちゃんと見せていなかったのだが、今作はちゃんと見せてくれる。しかも香港映画ばりの二丁拳銃で、撃ち合いになってもあちこち動いたりする。また、暗黒街の雰囲気や刑務所での囚人の描き方の「パピヨン」味もどちらも「勝負(かた)をつけろ」より増している。そしてクラウディア・カルディナーレが出演していて「大盗賊」以来のベルモンドとの共演が見られる、というのがポイントか。そしてラストの展開も、あまりに唐突な感じが強すぎた「勝負(かた)をつけろ」と比べてもわかりやすかったように思う。
それにしても11年の時を経て、同じ原作で同じ人物の役の依頼が来て演じる、というのは一体どんな気持ちなのだろう。28歳のベルモンドも39歳のベルモンドも、どちらも甲乙つけ難かった。
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