ほーりー

グラン・トリノのほーりーのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.4
「フレンチ・コネクション」のジーン・ハックマンや「ダーティハリー」のイーストウッドのような、このオヤジを本気で怒らせるとヤバイぞというオヤジ俳優が最近あまり見かけなくなったような気がする。

重鎮クラスでは、アル・パチーノやデ・ニーロといったコワモテ俳優はいるのだが何かまだ弱い印象を受ける。
個人の意見だが、ハックマンやイーストウッドが持つ凄味は、やはり実際に兵役を体験した(ハックマンは元海兵隊、イーストウッドは元陸軍)ことによるものだと思う。

前置きが長くなったが、本作「グラン・トリノ」は朝鮮戦争経験者の堅物の白人老人と、気弱なアジア人少年との交流を描いたドラマである。

イーストウッドは本作を俳優業最後の仕事と位置づけただけあって、本作の怒らせるとヤバい元軍人役はイーストウッド以外には演じられないようなまさにピッタリな役どころ。

この映画を公開当時に友達とレイトショーで観たのだが、その時に受けた衝撃は未だに忘れられない。
帰り道すがら、友人と「さっきの映画、スゴかったね!」とずっと話していた思い出がある。

舞台はデトロイト。かつては自動車の街として栄えていた街も、日本車の台頭でかつての繁栄は見る影もなく、主人公も元フォードの修理工という設定である。
※だから車が本作の重要なキーワードになってるんですねぃ。

ちなみにイーストウッド自身、ハイスクール時代は自動車整備コースを専攻していて、実際に自動車のエンジンの組み立てていたそうな。

のっけから葬式シーンからはじまる。イースウッド扮するウォルトは長年連れ添った妻と死別するが、うってかわって隣家に住むアジア人少年タオの家では誕生した赤ちゃんを祝っている。この辺の対比が印象的。

やがて、タオの従兄であるチンピラが登場し、タオをたきつけて、ウォルトの愛車グラン・トリノを盗もうとさせたことがきっかけとなり、白人の怖いジイサンと気弱なアジア少年の不思議な師弟関係がはじまる。

ウォルトはタオから優しさを学び、タオはウォルトから強さを学ぶ姿はベタな展開といえばそれまでなんだけど、こういう映画ってやっぱりいいよなぁ…と自分なんかは感じてしまう。

イーストウッドは勿論だが、タオ役を演じたビー・ヴァンも名演で、本作品以外で出演していないのが大変勿体ない。
ほーりー

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