ペンバートン

グラン・トリノのペンバートンのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.7
偏屈で保守的な老人がモン族という異質な文化に触れることで変容していくヒューマンドラマであるが、アメリカ社会における人種的マイノリティとそれに伴う軋轢が何度も強調されたりする。

生と死、西洋と東洋の儀式の対比から始まり、ラストは教会での葬儀に民族衣装に身を包んだタオ、スーも参列するというある種の壁の融解で幕を閉じる。誕生日プレゼントと引き換えに、施設への介護委託と遺産を狙うシーンや、最初のウォルトの妻の葬儀後、家に集まるシーンで彼の語った「ハムを食いにきただけだ」というセリフに象徴的なように、「交換」の価値観が成り立つ世界から、何も期待せずご飯を皿に装い続けたり、物を貸し借りする「贈与」的なモン族の文化に触れていくことで彼の心境は変化していく。
その差異は償いの価値観についても同様で、モン族の文化では直接借りを返すけれど、カトリックは神を介す。忘れられない過去の過ち・後悔を神に懺悔したのち、直近の責任について親愛なる友人のためにダイレクトに身を賭した彼の姿はやっぱり融和の象徴だと思うし、ラストなんかは究極の贈与・献身といえるのではないか。

全体を通してすごく間が心地良くて見やすい。クリント・イーストウッドが渋すぎてかっこいい。